見出し画像

短編『何も気にならなくなる薬』その63

※これはフィクションです。

「ニューデイズのチョコづくしが好き」
snsに記されていた情報が、唯一の手掛かりだったのか、全国の店舗で防犯カメラで彼が現れるのを待ち構えた。
この事が週刊誌で取り上げられたことを皮切りに、
ユーチューバーが動画のネタにしたり、
チョコづくしを今までに食べたことのない人はその味を知りたいがために店に買い求めたり、
また、知っている人たちは、自分が買うことで捜査の邪魔になってしまうのではないか、そんな杞憂を抱えていた。
「どうですか」
「いや、彼らしい人物は現れない。やはり食べ物一つで犯人を見つけるのは難しいのではないか」
捜査が難航すると、触れるネタがなくなってしまったからか、次第にこのチョコづくしに対する不信感をつのらせた書き込みも見受けられた。
「幼少期にチョコづくしを食べていた人間はろくな人間にならない」
「そもそもチョコレートは人間にとって害だ」
なんの根拠もない言葉がネットの海に放り投げられた。
結果的にチョコづくしの売上が伸び、ニューデイズの看板商品としてその名を轟かせた。
数日後犯人が自首をした。
食べたい物を食べれないくらいなら自首をした方がいい。
よくある刑事ドラマのカツ丼は、彼にとっては一つの菓子パンであった。

美味しいご飯を食べます。