短編『何も気にならなくなる薬』その76
「ママ友」
「予備校」
「サンバイザー」
今回はこの三つ。
ママ友というのは一生経験できないものである。
というのは私が男性だからというのがあるが、反対にパパ友というのはどういったものなのだろう。
これは経験できるかもしれないが、第一、相手を見つけ、しかも子宝に恵まれないとなれないのだからそう簡単になれる立場ではない。
何だかとてつもなく遠い存在に思える。
「ねぇ、私、今日はテニスサークルの集まりがあるから、子供のこと宜しくね」
「あぁ、前から言ってたもんな、ゆっくり羽伸ばしてきなよ」
「それじゃあ、行ってくるけど、何か言うことない?」
「あぁ、サンバイザー似合ってるよ」
「じゃ、あと宜しくね」
「ママお出かけ?」
「あぁ、ママ友とテニスしに行ったんだよ」
「遊びに行ったの?」
「まぁ、そういうことだな、だから今日はパパとお留守番だ」
「パパはお友達と遊ばないの?」
「たまーに遊ぶぞ」
「何して遊ぶの」
「何って言われてもな。お酒を飲んでおしゃべりをするんだな」
「楽しい?」
「お前もそのうちわかるよ」
「タケシ君のママもテニス?」
「そうだな、タケシ君のママも一緒にテニスだな」
「じゃあさ、タケシ君とタケシ君のパパも一緒に遊ぼう」
「そうだなぁ、ちょっと聞いてみようか……もしもし、これこれこういうわけだけど、どう?あ、そう、じゃあ、あっ、こっちでいい?じゃあ待ってます」
ピーンポーン。
「あっ、タケシ君来た」
「いらっしゃい、なにもないけどゆっくりしててって」
「いや、助かったよ。家のこと何も手を付けるなって言われてたから、悪いけどお邪魔させてもらうよ。しかし、たまには息抜きさせなくちゃとは思うが、よくもまぁテニスができるな、あんなフリフリのウェアを着て、サンバイザーつけて、しかも褒めないと家を出ないんだよ」
「そっちもか」
「お前もか、どこの家庭も同じようなもんなんだな。するとあれか、お前のところもそろそろアレか」
「アレっていうと」
「予備校」
「あぁ、予備校な、まだ先だけど、そのうちそういうのには行かせなきゃ行けないよなって話にはなってる」
「たしかに予備校はだいぶ先だけれど、塾とか習い事とかどう思う」
「何か候補は出てるのか」
「まぁ、音楽とか算盤とか出てるけど、こういうのって親のエゴだからな」
「まぁ、俺も算盤習ってたお陰で仕事の時とかワリと役にはたっているな」
「そうなんだよな、子供のときはなんでそんなことしてたのかわからないけど、意外と将来のこと考えてくれてるんだよな」
「まあ、それも当人次第だけどな」
「ただいまー」
「あら、パパ同士で集まってたの」
「意外と早かったな」
「やっぱり久しぶりだったから、体力保たなくてね」
「ママ、今度は一緒にテニスやりたい」
「あら、テニスに興味もったの?」
「だってパパ、難しい話ばかりで、全然相手してくれないんだもん」