短編『何も気にならなくなる薬』その74
「謎」「無念を晴らす」「ミルクチョコレート」
ランダムに出されたお題でお話を書いていく。
その前にミルクチョコレートとはなんぞや。
調べてみた。
ミルクチョコレートは粉乳を使用したチョコレートのこと。
メーカーによってはショコラ・オ・レと呼称する場合も……
甘めに設定されたチョコレートという感じか。
コーヒーでいうカフェ・オ・レ的な感じだろうか。
「さて、今回の事件だけど、おおよそ犯人は誰かわかっているわ」
「あっ、謎が解けたのですか」
「犯人は口元に証拠を残している」
「あっ、本当だ口元にミルクチョコレートが」
「素直に白状しなさいよ」
「あっ、犯人が涙を溢した」
「いえ、これは違うの。苦くて泣いているの。これはミルクチョコレートなんかじゃない。カカオ100%のチョコレート」
「どうしてそんなことを」
「だって、三人でバレンタインのお菓子を作るって約束して、材料を持ち寄ったのに、私だけハイカカオのチョコレートを持ってきてしまったんだもの、皆に迷惑をかけたくなかったから、証拠を隠そうと思って食べたの。でも、思ったより苦くて」
「そんなこと気にしなくてよかったのに」
「だって、バレンタインで皆に苦い思いをしてほしくなかったから」
「まさかそこまで思ってくれてたなんて」
「でもね、もう一つ謎があるの」
「なに?」
「牛乳がないの」
「まさか」
「ごめんなさい、あまりにも苦くて何か飲まなくちゃって必死で」
「しかも口つけて飲んだの」
「ごめんなさい」
「もういいわ、今更買いにもいけないし、無念を晴らすために、この板チョコだけでも渡しに行くわって、あっ、他の板チョコが割れてる」
「あっ、ごめんなさい、それは私です」
「どうして」
「あの、つまずいちゃって手をテーブルについた所にチョコレートが」
「もう何もできないじゃない、今年のバレンタインは中止」
「はーい」
「いい?抜け駆けはなしだからね」
「どうしてそんな事言うの」
「もしかして、抜け駆けするつもりだった?」
「まさか、そうやって疑うあなたのほうが抜け駆けしようとしたんじゃないの」
「見て、鞄の中に本命チョコみたいな梱包のチョコが」
「違うわ、それはショコラ・オ・レよ」
「言い方が違うだけじゃない。あなたそうやってわざと間違えて三人で作るのを邪魔しようとしてたんでしょう」
「そういうあなたこそ鞄の中にゴディバの本命チョコがあるじゃない」
「そっちこそモロゾフのチョコレートじゃない」
「皆で食べようと思ったの」
「今更そんなこと言って、じゃあ食べさせなさいよ」
わーわーきゃーきゃーやっておりまして。
「あーあー、今年もチョコくれたのはお母さんだけか」