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費やしても費やしても

ゲームセンターのUFOキャッチャー。
うれしそうに景品を抱きかかえる子供もいれば、悔しそうに帰る子、泣きじゃくって駄々を捏ねる子もいる。
運良く、腕よく、手に入ることはある。
どれだけお金と時間を費やしても手に入らないこともある。
人生の縮図だ。
生きるためのお金を稼いで費やす。
うまくいくかどうかもわからない人生を費やす。

いつだったか盤上にいる私は大きな手にキャトルミューティレーションされる夢を見た。
あぁ、どこかで誰かが私を見ていて、私という駒を大事に大事に扱おうとしてくれているのだ。
隣で罵詈雑言を吐き散らす彼は、きっとぞんざいな扱いをされてきた駒なのだ。
生まれや育ちは決してキングやクイーン、ナイトではない。ポーンもいいところ。
ぐっと持ち上げられた自分の位置から下を眺めて見る。
視野を広く持つと物事が広く見える。
あの駒とあの駒は中が良い悪い。掛かっている。等価交換が行われる。
損切りをする。
肉を切って骨を断つ。そんな動きも見えるようになる。

そしてまた私はUFOキャッチャーに立ち戻る。
取れそうだな、取れなそうだな。
良さそうだな、悪そうだな。
もう少しこっちだったらいいのに。
たぶんそういうことを考える。
取れなくても、費やせば費やしただけチャンスはある。そして、多少なりとも改善する。
まぁ、悪手もある。
とはいえ、生きている限りはなんとでもなるのだ。
また今日も私は私のために百円玉を投入する。

美味しいご飯を食べます。