短編『何も気にならなくなる薬』その293
〜アクセス、ドレスコード、追加、ユニフォーム、導入〜
「今回のドレスコードは」
バラエティ番組のそれは様々なテーマを与えられた芸能人がどのような格好をするのか、またその言葉を捉えるのかを楽しむ趣旨だ。
「ユニフォームです」
バックモニターにデカデカと歓声とともに現れる。
「それでは早速登場していただきましょうどうぞ」
芸人たちが次々にランウェイを模した会場に並びだす。
各々が過去にやっていた部活や現在進行形でやっている趣味のスポーツのユニフォームを着ている。
中には想像もつかなかった格好をしている人もいる。
「彼、テニスやってましたっけ」
「あぁ、知らない?見てれば分かるだろうけどテニスを題材にしたドラマにでるんだよ」
「あ、番宣ですか」
「そ、実際に今まで何をしていたかはどうでもいいのよ番組としては」
「それで次回は何でしたっけ」
「クリスマスだよ」
「それ大丈夫ですか?あのYさんってたしか根っからのキリスト教じゃなかったですか」
「それも含めてだよ」
「はぁ、舞台作家の頭の中が見てみたいですよ」
「結果的にそれで話題になるから業界的には問題ないってこと、それでもし世の中から干されるなら後は幾らでも控えてるから」
「なるほど、それは良くできてますね」
「カットしてカット、あのね、ちょっとコレじゃあ薄味だから何か追加しよう追加、そうだな、うん、犬、犬をだそうか、テニスボールを拾う犬」
「そんなの用意できるんですか」
「まぁ、するのが仕事だからな、結果的にこれで視聴率が増えればいいわけだから」
「でも最近そういうのにうるさい世の中じゃないですか、愛護団体とかコンプライアンスの導入とか」
「そんなもの気にしていたら世の中に何も発信できなくなるよ」
「そういうもんですか」
「あぁいうのを騒ぎ立てるのは結局なにか敵を作らないとならない性分なんだよ。噛みついてくる野良犬と一緒だ。なにせこっちは表現を規制しろという暴力を受けているんだから、抵抗しないほうがおかしい。仕事をするなと言われているようなもんだ。でもまぁ、そういう連中が生活を保障してくれるなら幾らでも言うことは聞くがな」
「そういうもんなんですかね」