あるカーデザイナーのクルマ選び018
5th car
1978 MG-B (L4 OHV)
USウレタンバンパーモデル
油圧式オーバードライブ マスタードイエロー
ハイラックスサーフは私がT社からH社に会社が変わっても、我が家の生活をずっと支えてくれる頼もしい存在でした。
愛知県から埼玉県に引越し、アパートの前には畑を造成しただけの広々した空き地でしたが、お手頃価格の駐車スペースがありました。そんな、車所有には申し分ない住まいを会社が社宅として貸してくれました。
新しい職場では、いろんな車を試乗として家に乗って帰ることもでき、週末に借りる事もできました。
これは、車を企画開発する立場の人間にとっては、とてもありがたく、大切なことだったと思います。
私は時間が許す限り、そのチャンスを活かし、いろんな車を試乗させてもらいました。
なんと、その賃貸アパートの未舗装駐車場に真っ赤なフェラーリテスタロッサで帰ったこともありました!
この車を借りれる事になったきっかけは、私が仕事でうまくいかないで苦労している時に、職場の先輩が「これで気分でも変えてきな!」と言っていただけたからでした。
その方だけでなく、私は本当に周りの方々に助けられてここまで来れたなぁとあらためて思います。
話はテスタロッサに戻りますが、私がこの機会を得た時に一番先に考えたことは「一体、何を着て運転すればいいのだろう?」ということでした。
車には似合うファッションがあると思うのですが、さすがにフェラーリの最上級車はあまりにも自分の生活とかけ離れ過ぎていて想像できませんでした。
結局、その時は、開き直りとでもいう境地で、Gパンに白Tシャツにしたのでした。
そして、その車で、横浜の先輩が入院している病院までお見舞に出かけることになったのですが、病院の駐車場に停めるのにも、車幅が広いのでひと苦労でした。
何度も切り返しをするものだから、その度に静かな病院駐車場にウヮオンウヮオンとV12がイイ音を奏でてくれ、病院の窓からの目線が増えていくという始末、、、
そして帰りには、ガソリンが足りるか不安になり、念のためにと、ガソリンスタンドで10リッターだけテスタロッサに給油してもらうという貴重な経験もしました。
一般道では左折時に普通の車とは桁違いに気を遣うので、帰りのルートは東名と首都高で帰ることにしました。
なぜなら、テスタロッサはリアトレッドがフロントより広く、つまり後ろ半分は外に出っ張っているので、左折時の内輪差を気にして曲がらないとリアフェンダーやホイールを擦ってしまいそうになるのです。
ところが、高速に乗った途端に土砂降りの大雨。。。
今度はその恐ろしく幅の広いリアタイヤがハイドロプレーニングを起こさないかと、冷や冷やしながらのドライブとなり、胃が痛くなるような初めてのフェラーリ体験になったのでした。
そしてその後も、他のフェラーリを運転する機会がありましたが、このテスタロッサが一番印象に残っています。
そして、意外にもクラッチやミッション操作が軽く、楽だったのも印象的でした。
その他にも、いくつもの初めての車を体験させてもらえました。
例えば、ベントレーというロールスロイスのスポーツブランドの4ドアセダンでは、あの重量級の車が結構乗って楽しい車という事を知りました。
また、ジャガーXJというブリティッシュセダンは、運転者も同乗者も乗車している全員がエレガントな気持ちになれることを感じさせてくれました。
車の形、性能、使い勝手だけでなく、その車に乗車した時の気持ちなど、たくさん発見させてもらえた貴重な体験でした。
つづく