2024.11.22 ストリートスナップ
街を歩いていると、ごくまれに「なんだこれは」と言わざるをえない瞬間に出会う。それはこちらの倫理とか道徳心を揺さぶるような瞬間で、もっと近づいて撮りたいという欲望に駆られる。とはいえ、実は僕にもみなさん同様に理性が備わっているから「あんちゃんそりゃダメだぜ」ってことはやらないしやれない。
なぜそういう欲望が湧いてくるかというと、自分はその街とは全く関係が無い部外者だからこそ、そこの住民には無視されている存在が醜くも美しく思えるからである。
ただ、それらはだいたい他人宅の敷地内とか立入禁止の場所だったりするところにある。魅力的なモノやコトはなかなか見つかりやすい路地には出てこない。「偶然の出会い」としか言えない瞬間にそれらは立ち現れる。そしてそれは倫理を侵食しうるほど衝撃的だ。
しかし、いかにも熱中して撮ってますみたいな態度でうろうろするのは忍びないから撮影に時間は掛けない。ファインダーを覗いたらすぐ撮ることを心がけている。だから写真が定点観測的に写るけれど、他者の日常を撮る距離というのは自分の中の他者との距離でもある。ありのままの自分なんか捨てて、主体は三〇%も残っていれば十分。一見すると冷たく見える定点観測的な写真は、安易なストーリーテリングに収斂されない強さを持つ。
アウグスト・ザンダーが今年のパリフォトで大々的にフィーチャーされたのは、冷徹な情熱を持って世界に開いていく姿勢を時代が求めているからではないのか。その姿勢を獲得するためには、自分にとって不都合なことも許せないことにも眼差しを向けないといけないと思う。やはり、写真は「見ること」に尽きる。