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古今集巻第十七 雑歌上 913番
題しらず
よみ人しらず
なにはがたしほみちくらしあま衣たみのの島にたづなき渡る
難波潟潮満ち来らし雨衣田蓑の島に田鶴鳴き渡る
難波の干潟に潮が満ちて来たらしい、雨が降って衣を着たような田蓑の島で田鶴が鳴き続けている
「難波潟」は、大阪の海辺の干潟、「田蓑の島」は、そこにあった島のようで、天王寺あたりとの説もありますが、実際はわかりません。
「雨衣」は、「蓑」に掛かる枕詞です。
海辺の干潟が雨で曇ってよく見えないが、島のあたりで鶴が鳴き騒いでいるのは潮が満ちてきたからだろう、と動きのある自然の様子を海辺の音を聞いて想像している歌です。
動きのある自然の情景だけを表現し、自分の感動は言葉に書かない詠い方なので、万葉時代の作だろうと思います。「潮満ち来らし」の「らし」も古い表現です。
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