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古今集巻第十七 雑歌上 930番

田村の御時に、女房のさぶらひにて、御屛風の絵御覧じけるに、たきをおちたりける所おもしろし、これを題にて歌よめと、さぶらふ人におほせられければよめる
三条の町 惟喬親王母
おもひせく心のうちの滝なれやおつとは見れど音のきこえぬ

田村の御時に、女房の侍ひにて、御屛風の絵御覧じけるに、滝落ちたりける所おもしろし、これを題にて歌詠めと、侍らふ人に仰せられければ詠める
三条の町 惟喬親王母
思ひ塞く心の内の滝なれや落つとは見れど音の聞こえぬ

文徳天皇の御世に、女房の詰め所の台盤所で、帝が屛風の絵をご覧になって、滝の水が落ちているところが趣きがある、これを題にして歌を詠んではどうかと、控えていた者に仰せになったので詠んだ歌
三条の町
これは思いを塞き止める心の中の滝なのでしょうか、水が落ちているのは見えますけれど、音は聞こえません、私も思いを塞き止めていますから、姿はここに見えますが、心の声は人には聞こえないようです

田村の帝は、御陵が京都の太秦の田村(田邑)にある文徳天皇のことです。
「三条町(さんじょうのまち)」は紀静子(きのしずこ)、文徳天皇の更衣。天皇との間に惟喬親王や恬子内親王の子供がいます。兄が紀有常で、有恒の娘は在原業平の妻です。この関係からか、伊勢物語には、惟喬親王と紀有常が出てきます。

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ちのみゆき
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