古今集巻第十七 雑歌上 885番
田村のみかどの御時に、斎院に侍りけるあきらけいこのみこを、母あやまちありといひて、斎院をかへられむとしけるを、そのことやみにければよめる
あま敬信
おほぞらを照りゆく月しきよければ雲かくせどもひかりけなくに
田村の帝の御時に、斎院に侍りける慧子内親王(あきらけいこのみこ)を、母過ち有りと言ひて、斎院を替へられむとしけるを、そのこと辞みにければ詠める
尼敬信(あまのきょうしん)
大空を照り行く月し清ければ雲隠せども光消(け)なくに
文徳天皇の御代に斎院でいらっしゃった慧子内親王を、その母に間違いがあったので斎院を交代させようとしたのを、疑いが晴れて取り止めになったので詠んだ歌
尼敬信
大空を照り行く月はどこまでも清いので、たとえ雲が隠してもその光が消えることはない
斎院は清いので、母の疑いがあっても、そんな疑いは正しくなく晴れるものだ、そして斎院はどこまでも清いのだ、という歌です。
文徳天皇は、京都の太秦の田村(田邑)に御陵があるので、田村の帝とお呼びします。
慧子内親王(あきらけいこのみこ)は、文徳天皇の皇女。ここでの斎院は加茂神社(上賀茂神社、下鴨神社)の斎王です。
「消(け)」は、動詞「消(く)」の未然形。消えるの意味です。け/け/く/くる/くれ/けよ、と下二段活用します。
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