古今集 巻三 夏歌 138番
題しらず
伊勢
五月来ばなきもふりなむ郭公まだしきほどのこゑをきかばや
題しらず
伊勢
皐月五月が来たなら鳴き声も古びてしまうだろう、ほととぎす、慣れていないぐらいの初々しい声を聞きたいものだ
「皐月来ば(さつきこば)」は、5月が来たら。
「なきもふりなむ」は、「鳴きも古りなむ」。
「まだしき」は、「まだし」の連体形で、未だに不十分だ、未熟だという意味です。
伊勢は恋の多い女性なので、男性から人気があったようです。この歌は、時期を見計らっていないで、じらさずに早く訪ねて来てねと男性を誘っているのかもしれません。伊勢のお相手は、天皇、皇子もいたので、公卿たちは、万一皇族とおつきあい中に忍んで行ったことがばれてしまうと、とてもまずいことになりますから、今は相手がいないことを確認しないと近づくことができません。なので伊勢の方から、今は大丈夫だから早く来てねと言っているのかもしれません。
伊勢の和歌は、どちらかと言うと恋に悩んだ陰鬱なものが多い気がします。頭はいいが、少し暗い影のある女性で、そういうところを男性が好んだのかなと勝手に想像しています。
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