古今集巻第八 離別歌 377番
きのむねさだがあづまへまかりける時に、人の家にやどりて、暁出でたつとて、まかり申ししければ、女のよみて出だせりける
よみ人しらず
えぞしらぬ今心みよ命あらば我やわするる人やとはぬと
紀むねさだが東国へ行く時に、ある女の家に宿って、暁の朝方に出で立つと暇乞いを送ってきたので、妻が詠んで出した歌
よみ人しらず(妻)
全くわかりませんが今、心をみてください、命がながらえたなら、わたしがあなたを忘れるのか、あなたがわたしのもとをもう訪れないのか
東国へ旅立つ前夜に他の女の家に泊まって、朝方になって妻のところに暇乞いの手紙を送ってきたので、妻は「どういうつもりですか?もうあなたの事は忘れれば良いですか、それともあなたは二度とうちへは来ないと言えますか?」とかなり怒っています。
「えぞしらぬ」は「え知らぬ」に強調のぞが付いたもので、知ることができないの意味。「心みよ」は「試みよ」で「想像してみなさい」の意味。「まかり申し」は「暇乞い」のことです。
「きのむねさだ」はおそらく紀宗貞でしょうけど、誰なのかわからないそうです。
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