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古今集巻第八 離別歌 404番
しがの山ごえにて、いしゐのもとにて、ものいひける人のわかれけるをりによめる
つらゆき
むすぶ手のしづくににごる山の井のあかでも人にわかれぬるかな
都から志賀への山越えの、岩間から湧く石井の水場のところで、言葉を交わした知り合いの女官と別れる時に詠んだ歌
紀貫之
結んですくった手からこぼれた雫で少し濁った山の井の水に満足できず、また語らいが十分にできずに満足できず、ちがう道へ別れてしまうものだな
水をすくうのに結んだ手が離れ、出会った女官とは少し話して別れる、そういう譬えだろうと思います。
この道は、都から志賀のお寺、崇福寺へお詣りに人がよく通ったそうです。今で言う山中越です。女性は輿に乗っているので簡単に声はかけられませんが、水の湧く場所で休憩している顔見知りなら、話すことができます。
「あかでも」は、飽きていなくても、つまり、物足りないという意味です。
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