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古今集巻第十五 恋歌五 789番

心地そこなへりけるころ、あひしりて侍りける人のとはで、ここちおこたりてのち、とぶらへりければ、よみてつかはしける

兵衛

しでの山ふもとを見てぞ帰りにしつらき人よりまづこえじとて

からだの具合が良くなかった時、相知っていた人が訪ねて来ず、治った後で、お見舞いを送って来たので、詠んで送った歌
兵衛
冥土にある死出の山の麓だけを見て帰って来ました、冷たいあなたより先に一人で越えるものかと思って

「心地損なふ」は、病気になること、「心地おこたる」は、病気が治ることです。もののけが怠けたから病気が治ったということでしょう。
「死出の山」は冥土の途中にある山。

兵衛は藤原忠房の妻と言われています。病気の時に夫の忠房が全く見舞いにも来ず、治ってからちょっとした物だけが届いたので、残念な気持ちになり、「あなたより先に死んでなるものかと思って冥土から引き返えしてきました」と怒りをぶつけた歌だと思います。

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