古今集巻第十三 恋歌三 669番
題しらず
よみ人しらず
大方はわが名も湊こぎいでなむ世をうみべたに見るめすくなし
題知らず
詠み人知らず
おおかたのところでは、わたしの名も湊を漕ぎ出すように世間に出してしまおう、いつまでも海辺にいても海松布は取れないように世を憂いても逢う機会は少ないのだから
海辺にいても海藻の海松布(みるめ)は取れないから湊から漕ぎ出そう、世を憂いても逢う機会(見る目)は無いから恋していると噂に名を出してしまおう、という意味を掛けた歌です。
「うみべた」は海辺。「へた」は端、へり、ほとりの意味。「世をうみ」は「世間は海辺のようなもの」と「世を倦む」で世の中はうまく行かないものだと嘆くこと。「わが名もみなと」は「私の名の噂も湊から」と「私の名の噂も全部すっかり(みな)」の掛詞です。
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