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古今集 巻三 夏歌 139、140、141番
題しらず
よみ人しらず
さつきまつ花橘の香をかげば昔の人の袖のかぞする
いつのまにさ月きぬらむあしひきの山郭公今ぞなくなる
けさきなきいまだ旅なる郭公花たちばなにやどはからなむ
題しらず
よみ人しらず
皐月5月を待っている橘の花の香りをかいだら、昔のあの女性の袖の香りがした
いつの間に皐月5月が来たのだろう、長く尾をひいた山のほととぎすが今鳴いている
今朝来て鳴いていた今はまだ旅の途中のほととぎす、我が家の花の咲く橘の枝を宿に借りてほしい
さつきまつ、の歌は伊勢物語にも出てきます。男性が宮仕えの仕事が忙しくて、結婚した妻を大事にしなかったので、女は寂しくて地方へ赴任する他の男性に嫁ぎます。年月が経って、元の男性が都から使いとして地方(宇佐)に来たところ、おもてなしの時に出てきたお役人の妻が元妻でした。お酒のお供に出ていた橘の実を取って
さつきまつ花橘の香をかげば昔の人の袖のかぞする
(皐月を待つ花橘の香りをかぐと、昔の妻の袖の香りがする)
と詠うと女は気が付いて恥じて尼になったという話です。
伊勢物語では、誰が詠んだとははっきり書いていませんから、逆でもいいようにも思います。お酒のお供に橘を出しながら、元妻が
さつきまつ花橘の香をかげば昔の人の袖のかぞする
(いつも待たされていた私には、皐月を待つ花橘の香りをかぐと、あなたの袖の香りのように思えます)
言いたいことは言ったので、女は今の夫に対する申し訳なさから尼になった、これでも話は通りそうです。
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