古今集巻第十七 雑歌上 863番
題しらず
よみ人しらず
わがうへに露ぞおくなるあまの川とわたる舟のかひのしづくか
題知らず
詠み人知らず
我が上に露ぞ置くなる天の川、門渡る舟の櫂の雫か
我が衣の上に露が置いているように濡れている、天の川の川門を渡る舟の櫂の雫なのだろうか
櫂の雫(かひのしづく)は、天の川と言っているので、牽牛が織女のところへ通う舟の櫂から落ちてくる雫です。これだけではなんのことかわかりません。とにかく濡れている理由を織姫彦星に当てて想像しただけです。
この歌は、伊勢物語59段に出ており、こちらではその事情は、「山里に住んでいてひどい病いになり、亡くなってしまうぐらいなので、家人が顔に水をかけると息を吹き返して、この歌を詠んだ」ということです。
東山というのは京都市の東山区の岡崎とか清水寺があるあたりですが、この時代は京と東山は別の場所で、しかも東山は「山里」つまり農村です。
伊勢物語59段
むかし、男、京をいかが思ひけむ。東山に住まむと思ひ入りて、
住わびぬ今はかぎりと山里に身をかくすべき宿をもとめてむ
かくて、ものいたく病みて、死に入りければ、おもてに水そゝぎなどしていき出でて、
わが上に露ぞ置くなる天の河門渡る船のかいのしづくか
となむいひて、いき出でたりける。
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