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古今集巻第十五 恋歌五 776番
題しらず
よみ人しらず
うゑていにし秋田かるまで見えこねばけさはつかりのねにぞなきぬる
題知らず
詠み人知らず
田植えをして帰ってしまったあの人は、秋の田を刈る季節になっても逢いに来ないので、とうとう今朝は初雁が鳴くように声に出して泣きました
「植ゑて往にし秋田刈るまで見え来ねば今朝初雁の音にぞ鳴きぬる」
結婚している状態であれば、男性は女性の家の仕事に参加しますから、田植えをしに来て、その後もいろいろ手伝いに来ます。ところが、一度もやって来ずに秋の刈り取りの季節になり、さらに晩秋の初雁が鳴く季節になってしまった、わたしも雁のように泣いているという歌です。
「田植え」も含めて全て例えだと考えれば、あの人は、わたしの心に逢いたい気持ちを「植えて」おきながら、「飽きて」しまったのだろうか、心が「離れて」しまったのだろうか、私の心も「枯れて」いく、ということです。
「秋田刈る」は、「秋、飽き」、「刈る」は「離る(かる)」「枯る(かる)」「雁(かり)」の掛詞です。
初雁は秋に初めて北から渡ってくる雁のことです。
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