古今集巻第十八 雑歌下 991番
つくしに侍りける時に、まかりかよひつつごうちける人のもとに、京にかへりまうできてつかはしける
きのとものり
ふるさとは見しごともあらずをののえのくちし所ぞ恋しかりける
筑紫に侍りける時に、罷り通ひつつ棋打ちける人の元に、京に帰り詣で来て遣はしける
紀友則
古里は見し事もあらず、斧の柄の朽ちし所ぞ恋しかりける
筑紫の国にいた時に、やって来ては碁を打った人の所に、都に帰って来てから送った歌
紀友則
古里の都は以前に見た様子とも違っている、斧の柄が朽ちたという伝説のように昔の都や君と碁を打った筑紫の国が懐かしい
「斧の柄の朽ちし所」は、晋の王質の故事「王質が木を伐って信安の石室山に行くと、二人の老人(仙人)が棋を囲んでおり、王質に棗(なつめ)の核のような物を与えた。これを含んでいると飢を覚えず、まだ一局も終わらないのに、 携えていた斧の柄を見ると既に腐っていた。家に帰ると、昔の人はだれも居なかった」によります。石室山を筑紫と見ています。
筑紫国で友人と碁を打って楽しんでいる間に、都はすっかり変わってしまった。昔に戻りたい、という歌です。いわゆる浦島太郎の気持ちです。
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