古今集巻第二十 大歌所御歌 1072番
みづぐきぶり
よみ人しら
水ぐきのをかのやかたに妹とあれと寝てのあさけの霜のふりはも
水茎振り
詠み人知らず
水茎の岡の館に妹と吾(あれ)と、寝ての朝けの霜の降りはも
水茎の歌
詠み人知らず
水茎の岡の仮屋で、妻と我と寝て、そして朝方には霜が降ったなあ
「水茎の(みづぐきの、みづくきの)」は、岡に掛かる枕詞。本来は、筆跡とか手紙のことですが、ここでは枕詞であり、地名として使われています。
「やかた(館、屋形)」は、ここでは仮の家、簡単な作りの小屋のようなものを指します。
「朝け」は「朝明け(あさあけ)」がつづまったもの。早朝。
「はも」は、終助詞の「は」「も」を重ねて愛惜や回想の詠嘆を表す古い言葉です。
集落から離れた所にある山や田畑を見守る小屋で恋人と一夜を過ごし、その朝明けに霜が降った、戸を開けるとその寒さにはっとする。晩秋から冬へとへ向かう四季の移ろいや、おおらかな人の生活の営みを感じさせる古歌だと思います。
水茎の岡は、滋賀県近江八幡市の琵琶湖畔の山のようです。
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