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古今集巻第十四 恋歌四 745番
おやのまもりける人のむすめに、いと忍びにあひて、物らいひけるあひだに、おやのよぶといひければ、いそぎてかへるとて、裳をなむぬぎ置きて入りにける、そののち裳を返すとてよめる
おきかぜ
あふまでのかたみとてこそとどめけめ涙に浮ぶもくづなりけり
親が大切にしている子供の中の娘に、忍んで逢って、あれこれと語らっているうちに、親が娘を呼んでいると侍女が言うので、娘は急いで親の部屋へ帰ろうとして、脱いであった裳だけを置いて奥へ入って行ったので、(形見に持ち帰って)その後に裳を返すと言って詠んだ歌
藤原興風
ふたたび逢うまでの形見としてわたしの為に留め置いてくれたのでしょう、その後は逢えないので裳を見ては涙し、わたしは涙に浮ぶ藻屑のようです
漢字を入れると
「親の守りける人の娘に、いと忍びに逢ひて、物等言ひける間に、親の呼ぶと言ひければ、急ぎて帰るとて、裳をなむ脱ぎ置きて入りにける、その後裳を返すとて詠める
興風
逢ふまでの形見とてこそ留どめけめ涙に浮ぶ藻屑なりけり」
裳(も)は腰から下に着るもの、何枚もはくスカートの一番上みたいなものです。
「もくづ(藻屑)」と「も(裳)」は掛詞です。
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