古今集巻第十九 雑躰誹諧歌 1036番
題しらず
ただみね
かくれぬのしたよりおふるねぬなはの寝ぬ名はたてじ来るないとひそ
壬生忠岑
隠れ沼(かくれぬ)の下より生ふる根蓴菜(ねぬなは)の寝ぬ名は立てじ来るな厭ひそ
水草に覆われて隠れた沼の底から生えている根蓴菜(ねぬなは)の名前と同じ、共寝もしていないのに噂だけを立てたくはない、私が来ることを厭わないでくれ
「隠れ沼(かくれぬ)」は、水草で隠れている沼。
「ねぬなは」は、根蓴菜(ねぬなわ、じゅんさい)です。食用の水草。
「寝ぬ名」は、一緒に寝てもいないのに立つ噂です。掛詞。
「来るないとひそ」ほ、「来る」ことを「な、いとひ、そ」(厭うな)です。「な〜そ」は軽い禁止の意味です。「来るな、いといそ(来るな、嫌がるぞ)」ではありません。
呪文のような分かりにくい歌です。おそらく自慢気にわざとやっています。他はほぼ平仮名にし、「寝ぬ名」を目立つように漢字にしています。
いいなと思ったら応援しよう!
応援してやろうということで、お気持ちをいただければ嬉しいです。もっと勉強したり、調べたりする糧にしたいと思います。