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古今集巻第十九 雑躰誹諧歌 1030番
題しらず
小野小町
人にあはむつきのなきには思ひおきてむねはしり火に心焼けをり
人に逢はむ付きのなきには思ひ起きて胸走り火に心焼けをり
想う人に逢う為の手掛かりが無いので、想いながら起きていて、胸の中を走る想いの火て心が焼けてている
「つき」は、手掛かり、方法のこと。「つきなし」はなす術がないこと。現代で、上手くいかないことを「ついてない」と言うのとほぼ同じです。
「つきのなきには」は、なす術がないという状態にあるので、ぐらいの意味。
「思ひ起きて〜をり」は、「そういう思いの中で起きて、〜のような状況にある」と言うこと。
「思ひ」は、恋の「火」と掛詞、
「起き」は「燠(おき、炭火が赤く燃えること)」と掛詞、
「胸走り(胸の中を思いが走り抜ける)」と「走り火(燠から跳ねる火)」の掛詞として、
思いの火が心で燃えることと、炭火が燃え跳ねることの意味が重ねられています。
掛詞のそれぞれの意味に関連をもたせることで、意味を二重にして情感を深めるのは難しい技能ですが、小野小町はこれを得意なようです。
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