古今集巻第十四 恋歌四 677番
題しらず
よみ人しらず
みちのくのあさかの沼の花かつみかつ見る人にこひやわたらむ
題知らず
詠み人知らず
陸奥の安積の沼に咲くというかつみ花の名のように、かつがつにとりあえず逢った人でも恋をし続けるものだ
上の句は「かつ見る」に掛かる序詞です。「かつみかつ見る」は「かつがつに見る」のことで、あちこち見たり、とりあえず見ておく、という意味。「花かつみ」は、かきつばたのようなものらしいです。
陸奥の安積山は昔、和歌を習うときに最初に教えられる歌にでてくる歌枕で、その歌を踏まえているようです。「安積山影さへ見ゆる山の井の浅き心を我思はなくに」(安積山には姿が映る美しい泉があるけれど、わたしの心は澄んでいても泉のように浅い気持ちであなたを思うのではありません)。
巻14の冒頭の歌としてこれを持ってきたのは、安積が出てくるからだと思います。
とりあえず出逢って関わり始めたが、結局は深い恋に落ちた、という歌です。繰り返し逢うことで互いの情が深まっていったことを正直に表現していると思います。
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