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古今集巻第十四 恋歌四 735番
人をしのびにあひしりて、あひがたくありければ、その家のあたりをまかりありきけるをりに、雁のなくをききて、よみてつかはしける
大伴くろぬし
思ひいでて恋しき時は初かりのなきてわたると人しるらめや
ある女性と密かに知りあったが、その後なかなか逢いにくく思っていた、その家の辺りを通って歩いた時に、雁が鳴くのを聞いて、詠んで送った歌
大伴黒主
あなたを思い出して恋しくなった時は、初雁が鳴いて通って行くように、わたしも泣いているのを、あなたは知っているでしょうか
逢いに行かなくなったのは、ひそかなので女性の親に見つかってはいけないことと、他の女性のところへ通っていたからでしょう。久しぶりで、すぐには家に入りにくくて、きっかけを探していたところ、初雁が鳴くのを聞いたので、歌にして送りました。女性から、良い返事が来れば家を訪ねますが、返事の歌が来なかったり、お断りの歌であれば、諦めることになります。
初雁なので秋から初冬です。
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