古今集巻第十四 恋歌四 740番
中納言源ののぼるの朝臣の近江介に侍りける時、よみてやれりける
閑院
逢坂のゆふつけ鳥にあらばこそ君がゆききをなくなくも見め
中納言源昇朝臣が近江の次官であった時、詠んで送った歌
閑院
逢坂の関の木綿付け鳥であったなら、君が行き来するのを泣きながら見るでしょう
源昇(みなもとののぼる)は、河原左大臣(かわらのひだりのおおいまうちぎみ)。
閑院は女官です。
左大臣が通って来てくれず仕事だと言ってたびたび近江へ行くので、近江へ行く途中の逢坂の関で鶏になってあなたに逢いたいと歌っています。
木綿付け鳥(ゆうつけどり)は、逢坂の関の祭祀の時に鶏に木綿の飾りをつけたもののようです。函谷関の鳥の空音の故事に基づくのかもしれません。こういうのを受けて「これやこの」「夜をこめて」などの有名な歌が生まれます。
そもそも閑院は藤原冬嗣の屋敷の名前で、この女官はそこに関わりがあるのでしょう。後に藤原公季(きんすえ)がこの屋敷を受け継いだので、公季を閑院、子孫を閑院流と呼んでいます。また江戸時代に宮家に閑院宮家があり、その邸宅は京都御所にあります。なぜ閑院宮家というお名前なのかはよくわかりません。
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