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古今集巻第十八 雑歌下 963番

左近将監とけて侍りける時に、女のとぶらひにおこせたりける返事に、よみてつかはしける
をののはるかぜ
天彦のおとづれじとぞ今は思ふ我か人かと身をたどる世に

左近将監(さこんのしょうげん)解けて侍りける時に、女(め)の訪ひ(とぶらひ)に起こせたりける返事(かへりごと)に、詠みて遣はしける
小野春風
天彦の訪れじとぞ今は思ふ、我か人かと身を辿る世に

左近将監を解任されていた時に、妻が見舞いの手紙を送ってきた返事として詠んだ歌
小野春風
訪ねて行かないと今は思う、我か人かと身のあり方を思い迷っている日々なので

「天彦(あまびこ)」は、「山彦(やまびこ)」のこと、こだまのことです。「おと、音」に掛かる枕詞。「おとづれじ」の「おと」に掛かります。
いつも通っている女性からの「どのようにお過ごしですか、お仕事はどうなりましたか(早く来てね)」と言うお見舞いの手紙への「返事」なので、「やまびこ」なのでしょう。

「我か人か」は、再任されるのが自分なのか他の人なのか、
「身を辿る(たどる)」は、自分の身がどうなるのか心の中で筋道を辿る、ことの展開を想像して悩ましく思う、不安に迷うことです。
そんな時なので、「今日は行くのはやめておく」と言う返事の歌です。

#古今集 , #雑歌下 , #小野春風 , #天彦

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