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古今集巻第十九 雑躰誹諧歌 1032番

題しらず
よみ人しらず
おもへどもなほうとまれぬ春霞かからぬ山のあらじとおもへば

思へども猶疎まれぬ、春霞掛からぬ山の有らじと思へば

恋しく思うけれども、それでもなお、嫌な気持ちになってしまう、春霞が掛からない山がないように、あの人はあちこちの女のところに通っていると思うので

春霞はどの山にでも掛かることを、恋しい男は今夜もどこかの女の家に通っているのだろうと、その残念な気持を歌っています。

「思へども」の「思ふ」は、「恋しく思う」の意味とするのが普通ですが、「推量する、予期する」ととらえることもできます。その場合は「きっとそうなんだろうと推量して分かっているのだけれども(それでもなお嫌な気持になる)」となって、この方が意味が通りやすい気がします。
「うとまれぬ(疎まれぬ)」は、動詞「うとむ」の未然形「うとま」+受け身の助動詞「る」の連用形「れ」+完了の助動詞「ぬ」の終止形で、「いやな気持にさせられてしまった」の意味。
「春霞の掛からぬ山のあらじ」は、春の霞はあっちの山、こっちの山と次々と掛かっていって掛からない山はないので、男があっちの女、こっちの女と毎日渡り歩いて立ち寄らない女の家などない、ということの例えです。

#古今集 , #雑躰 , #誹諧歌 , #春霞

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ちのみゆき
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