古今集巻第十三 恋歌三 616番
616番
やよひのついたちより、忍びに人に物らいひて後に、雨のそぼふりけるに、よみてつかはしける
在原業平朝臣
おきもせずねもせでよるをあかしては春のものとてながめくらしつ
弥生三月の朔日、人目を忍んで女と物思いを語った後、帰宅して春の雨がそぼ降ったので、詠んで送った歌
在原業平朝臣
起きる訳でもなく寝る訳でもなく夜を明かして、昼間は春のものとして長雨を眺めて過ごした
女性に逢って帰った後、家に帰ると春雨が降ったので歌を送ったようです。「物らいひて」は「物等言ひて」、寝物語りです。「ながめ」は長雨と眺めの掛詞です。夜と昼の過ごし方を対比しています。
この歌は伊勢物語の第二段にもあり、もう少し詳しく女性のことが書かれています。
伊勢物語の第二段
むかし、おとこありけり。ならの京は離れ、この京は人の家まださだまらざりける時に、西の京に女ありけり。その女、世人にはまされりけり。その人、かたちよりは心なんまさりたりける。ひとりのみもあらざりけらし、それをかのまめ男、うち物語らひて、帰り来て、いかゞ思ひけん、時は弥生のついたち、雨そをふるにやりける。
おきもせずねもせでよるをあかしては春のものとてながめくらしつ
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