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古今集 巻第五 秋歌下 252、253、254番

題しらず

よみ人しらず

霧立ちて雁ぞなくなる片岡の朝の原は紅葉しぬらむ

神無月時雨もいまだふらなくにかねてうつろふ神なびの森

ちはやぶる神なび山のもみぢばは思ひはかけじうつろふものを


題しらず
よみ人知らず
霧が立って雁が鳴いている片岡山の朝の野原は草木が紅く染まっているだろう
神無月の時雨もいまだ降らないのに、もうすでに紅く染まり始めた神なびの森だ
立派で美しい神なびの山の紅葉に、思いはかけないでおこう、移ろって枯れてしまうから

 片岡の朝の原(かたおかのあしたのはら)はどこかはわかりませんが、聖徳太子が道に倒れている乞食を助けたら、それが神様のような人であったという伝説の場所の片岡山かもしれません。そうすれば三首ともに、神のいらしゃる山にかかわる歌になります。
 「紅葉(もみぢ)しぬらむ」は、動詞「もみぢす」の連用形「もみぢし」(紅葉する)、助動詞「ぬ」の終止形(完了)、助動詞「らむ」の終止形(推量)で「紅葉しただろう」という意味です。
 「神なびの森」は、「神なびの山」と同じで神様が天から降りて来ていらっしゃる場所です。冷たい時雨が降ると紅葉が始まるのに、神なびの山は、その前から紅葉している、さすが神の山だと言うことでしょう。
 「ちはやぶる」は神の枕詞なので訳さなくてもいいのですが、「ちはやぶる神なび山のもみぢば」に思いをかけるので女性のことになるので「立派で美しい」と訳しておきました。

#古今集 , #秋 , #片岡の朝の原 , #神なびの森 , #神なびの山


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