古今集巻第十五 恋歌五 758番
題しらず
よみ人しらず
須磨のあまのしほやき衣をさをあらみまどほにあれや君がきまさぬ
題知らず
詠み人知らず
須磨の海人が塩焼きで着る衣は織のすき間が粗く離れている、そのように家も心も離れているからあなたはいらっしゃらないのか
「須磨の海人の塩焼き衣筬(をさ)を粗み間遠に有れや君が来まさぬ」
「須磨」は神戸の海岸。「塩焼き」は、とってきた海藻に海水を繰り返しかけて乾かし、塩分が濃くなったら燃やし、灰から塩を取る方法です。
「筬(をさ)」は織物を作る時に横糸を詰める道具だそうです。「をさをあらみ」は横糸をそんなには詰めないで粗く、という意味。
「間遠(まどほ、まどお)に有れや」は、距離や関係が遠いのだろうか、という意味。
「来まさぬ」は、来るの尊敬表現の「来ます」(いらっしゃる)の否定です。
この頃の一般の人は、家で麻布を織って衣服を作りますから、織物の道具や織り方についてよく知っています。歌にも縦糸横糸(経糸緯糸)などがよく出てきます。
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