古今集巻第十九 雑躰旋頭歌 1008番
返し
よみ人しらず
春されば野べにまづ咲く見れどあかぬ花
まひなしにただ名告るべき花の名なれや
春去れば野辺にまづ咲く見れど飽かぬ花
幣(まひ)無しにただ名告るべき花の名なれや
返歌
よみ人知らず
春が来れば野辺にまず最初に咲く見ても飽きない美しい花です、
でも贈り物も無しにただ教えるような花の名でしょうか、もちろん私の名前も名告ったりしませんよ
「春去り」は、「春が来る、春になる」の意味です。
「まひ(幣)」は、贈り物。「まいない(まひなひ)」の「まひ」です。
前の1007番の歌で、「そこに咲いている花の名はなにか(美しいあなたの名はなんというか、結婚してください)」と問われたことへの返歌として、「贈り物もくれないのにどうしておしえるでしょうか」と冗談ぽく答えています。名前を聞かれる(求婚される)と一旦は断るのが慣例です。その後、どうなったのかは、わかりませんが、男性がもっと強く誘って、女性は男性の機知を試すようなことを問うなどして、やり取りが続くのでしょう。
女性の名前を聞く求婚は、万葉集の最初の雄略天皇の長歌が有名です。歌の調子が必ずしも整っていないので、古い時代の伝承歌だと思います。ここでも菜摘みをしている女性に名前を聞いています。さらに「大和の国を治めている私の名と家を教えるぞ」と強引に誘っており、それを言われるともう付いて行くしかありません。雄略天皇らしさが出ています。
万葉集巻1第1番
籠もよみ籠持ちふくしもよみぶくし持ち
この丘に菜摘ます児家聞かな名告らさね
そらみつ大和の国はおしなべてわれこそ居れ
しきなべてわれこそませ
われこそは告らめ家をも名をも
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