古今集巻第十八 雑歌下 938番
文屋のやすひで、みかはのぞうになりて、あがた見にはえいでたたじやと、いひやれりける返事によめる
小野小町
わびぬれば身をうき草のねをたえてさそふ水あらばいなむとぞ思ふ
文屋康秀、三河の掾(じょう)になりて、県見(あがたみ)には得出で立たじやと言ひやれりける返事(かへりごと)に詠める
小野小町
侘びぬれば身を浮草の根を絶えて誘う水あらば去なむとぞ思ふ
文屋康秀が三河の国の役人になって、地方の見物にやって来ないかと言って来た返事として詠んだ歌
小野小町
寂しい思いをしていたので、この身は浮草のように根も失くなって漂っています、浮草が誘う水があれば流れていくように、わたしも流れて行こうかと思います
「ぞう、じょう、掾」は三等官。国守は上から、守介掾(かみ、すけ、じょう)がいます。
三河に遊びに来いと言う手紙の返事に、小町は河に寄せて浮草だから行こうかなと軽く流した返事をしています。浮草なので実際は行きません。行かないのですが、返事を送らなかったり、きまじめに行けない理由を書いたりせずに、こういう歌を返すので、小野小町は人気があったのだと思います。それが分かっていて康秀も手紙を送っています。
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