物理的にも心理的にもすれ違うドラマ(附・ヘラクレスの女出入りが3分でわかるまとめ) ソポクレス『トラキスの女たち』
男女のすれ違いドラマ、といえば菊田一夫のラジオドラマ『君の名は』(1952-1954。小説も1954年完結、河出文庫)。
しかしこれは男女が物理的にすれ違うお話で、心理的にはさほどすれ違わない。心理的すれ違いの最たるものは、ギリシア神話最大の英雄ヘラクレスの死を描いたソポクレスの悲劇『トラキスの女たち』(445BC? 大竹敏雄訳、『ギリシア悲劇』第2巻『ソポクレス』所収、ちくま文庫)だと思う。
この劇では、ヘラクレスとその妻デイアネイラとが、心理的なすれ違いを演じる。
のみならず、この両者は同時に舞台に登場することがない。いっぽうが舞台に立っているとき、その配偶者は舞台にいないのだ。
ヘラクレスをめぐる女たち(1)メガラ
ヘラクレスをめぐる女性たちには、デイアネイラ以前にテバイ王女メガラ、オイカリア王女イオレ、リュディア女王オンパレなどがいる。ヘラクレスは4人のうちイオレを除く3人とのあいだに子をなした。
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