自分がなにを知らないかを知ることは、人間にとって最大の難事のひとつ ソポクレス『オイディプス王』
「三人称でしか言えない『知らない』」の怖さ
〈自分の知識がどこで欠けているかを知っている状態〉=〈謎〉と、〈知らないだけでなく、自分がそれを知らないということも知らない〉状態(『人はなぜ物語を求めるのか』ちくまプリマー新書、193頁。太字強調部分は引用元では傍点)という、まったく違うふたつの状態をともに、僕らは「知らない」と呼んでしまっている。
前者は「一人称で言える『知らない』」、後者は「三人称でしか言えない『知らない』」ということができる。ほんとうに怖いのは後者だ。そして後者は原理上、前もって知ることができない。
自分がなにを知らないかを知ることは、人間にとって最大の難事のひとつなのだ(該当部分は下記でも読めます↓)。
災厄は先王殺しの穢れによるもの
コリントスの王子オイディプスはテバイの王位についた。行方を絶った先王ライオスの妃イオカステを娶った。爾来、疫病と不作が続いた。
イオカステの弟クレオンはデルポイでアポロンの神託を受ける。災厄は先王殺しの穢れゆえのものであり、下手人をテーバイから追放すべし、とのことだった。オイディプス王は公開捜査の布告を出す。
ソポクレスの『オイディプス王』(427BCE? 高津春繁訳、『ギリシア悲劇』第2巻『ソポクレス』所収、ちくま文庫)では、オイディプスはクレオンの勧めで、盲目の予言者テイレシアスに犯人の所在を尋ねる。
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?