岩波少年文庫を全部読む。(100)世界が苦手な中年男のインナースペースに小学生読者を拉致する問題作 舟崎克彦『ぽっぺん先生と笑うカモメ号』
舟崎克彦の『ぽっぺん先生と笑うカモメ号』(1976)は、岩波少年文庫版では対象年齢が〈小学4・5年以上〉となっています。
ニューウェイヴSF? 村上春樹? 安部公房?
しかしこれ、内向的で世界音痴(©穂村弘)な理系独身中年男性の内面世界に、小学生の読者を無理やり拉致してしまう、そういうやりたい放題の作品なんです。
『ぽっぺん先生と帰らずの沼』(1974)に続く《ぽっぺん先生》シリーズ第3作は、〈インナースペース〉などというニューウェイヴSFふうのタームで語りたくなる不思議な幻想小説。
ある意味で村上春樹の『海辺のカフカ』(2002。新潮文庫)や安部公房の「S・カルマ氏の犯罪」「バベルの塔の狸」(1951。『壁』所収、新潮文庫)のような、どんちゃん騒ぎの要素のある異界遍歴ものともいえそうです。
調査に出たぽっぺん先生を待ち受けるもの
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