行政主導のコワーキングスペースで気をつけたい3つのこと
どもども。青木です。
最近立て続けに地方行政の方からコワーキングスペース設立のご相談をいただきまして、回答が超大作になりました。せっかくなので"これだけは気をつけたい"という点を3つに絞ってお伝えしたいと思います。
1. 民業圧迫に注意しながら利便性を保つ
コワーキングスペースがまだポピュラーでない地方もあり、様々に試行錯誤されているところもあります。これは印象話ですが人口が20万人代の都市ではコワーキングスペース単体の売上で経営ができ、人口が10万人代では他業務と組み合わせて、人口が一桁万人代だと他業務の売上がメインでコワーキングスペースはサブとして、というケースが多いように見えます。
例えば日本で最も拠点数のあるコワーキングスペースはリージャス(国内170拠点以上!)ですが最も小さな人口規模の都市はつくば(24万人)、水戸(27万人)です。メインの収益はオフィス賃料ですので、つくばや水戸は都市の特性上、支社機能需要を取り込んでいるのでしょう。
話が逸れましたがここで気にしたいのはスペースを展開するエリアの貸オフィス、貸会議室の賃料、利用条件、利用状況です。この辺りを加味しながら民業圧迫と利便性のバランスを保ちたいです。
例えば民業圧迫のケースですと料金が低すぎてワークスペースや貸会議室需要だけでなく、近隣のカフェやファーストフード店需要まで取り込むケースがあります。地方の行政が運営するスペースで管理が行き届いていないところでは生徒や学生、お年寄りのたまり場になっていることがあります。(もともとただのコミュニティスペースとしていたところをコワーキングスペースという打ち出し方をしただけのところ。だいたいテナントが出ていったデパートにありがち)
一方であえて利便性を低くするスペースもあります。この場合はワークスペースとしての機能を毀損しない程度に留めておくのが良いでしょう。例えば入会時に面談を行う、定期的にコミュニティイベントに参加してもらうなどです。ワークスペース起点のコミュニティは人がそもそもいないと話が始まらないです。ワークスペースとしての価値を下げて民業圧迫を防ぐのは本末転倒と考えます。
結論としては民業圧迫を防ぐためには利用者へコミュニティへの積極参加を促す仕組みを作る一方でコミュニティ貢献に意欲がない人≒純粋にワークスペースとして利用したい人は来ないようにするという方法が良いでしょう。そういった施策の上でも民業圧迫を指摘されるようなら、その民業の方に問題があるのです。
2. 運営業者は外からどんどん資源を集められる業者を
ワークスペースの運営委託先をミスってるケースです。笑顔の素敵な受付、というところまではクリアしているものの、スペースに対するコンテンツ供給が不十分なことがあります。コンテンツ供給とは
・定期的な勉強会や相談会などのイベント開催
・事業相談について適切なアドバイザーを紹介できる
・そもそも事業相談を増やす取組みを行っている
など表面的なことは多くありますが、地域に留まらない他プレイヤーと繋がろうとしている、繋がっているかというところは大きいように思います。
移住者だから外部のネットワークがあると思って任せたのに、気づいたら完全に根を下ろしてその街の住人になっている委託者とかもザラですからね。
地域の他プレイヤーと繋がると自ずからコンテンツがスペースに供給されます。詳しくはこちらのnoteのExternalコミュニティマネージャーを参照ください。この役割を果たせない委託先を選ぶくらいなら地域でずっと活動してきたシルバー人材の再雇用者を受付に置く方がよっぽど活躍してくれます。(人生経験豊富な人材の地域ネットワークをナメてはいけない)
ちなみにこれを防ぐ秘策があるのですが生々しいのでここには書きません。
https://note.com/chinmu_/n/n0cc86a9729a5
3. 行政自身が他都市からたくさん学んで!
他社から学びすぎてなぜか悪いところを集めて作る大企業(スミマセン)もありますが、行政は他都市の優良事例をあんまり学んでない気がします。もちろん地域の地力の差は考慮に値するのですが、にしたって成長が鈍かったり"そう来たか"という施策が散見されます。"小さく始める"と言って会議室を開放してパイプ椅子を並べただけのスペース、街に飛んでいるフリーWi-Fiで仕事をさせようとする街など色んな事例を見るとけっこう面白いです。委託した運営者の言いなりになっていてはダメです。セカンドオピニオンを持ち、ちゃんと目指したい方向性を示し、うまくいかない企画を100も1000も積んでいくのです。市民の大切な税金を使って運営するスペースですから、なぁなぁにやってはいけないのです。
我らが本拠地仙台市でも行政に限らず色んなプレイヤーがインキュベーション、アクセラレーションに取り組んできました。3年前には仙台の経済誌で"注目のスタートアップ!"という見出しの下に飲食店が並んでいたのを見て頭を抱えることもありましたが、私が頭を抱えている間に皆さんが啓発活動を行っていたわけです。お陰で私も今その恩恵を受けています。大丈夫、なんとかしようと思えばなんとかなります!
…最後は想いの丈が強すぎましたが人口規模の小さい都市ほど"次の一手"に困っていると思います。テレワークの進展で職場と住居が市内で完結するという世界がもう来ています。イギリスでは人口10万人代の街でもワークスペース設立の要望が集まっているそうです。
今我々は日本の地図、人の流れが変わる時代にいるます。地域を盛り上げるためにコワーキングスペースからコミュニティ形成に取り組む自治体を応援します!