アメリカのコミュニティマネジメント事情 vol.1 エグゼクティサマリー
今回から複数回に渡ってTHE COMMUNITY ROUND TABLEが毎年発行しているCommunity Careers and Compensation 2020を紹介していきます!
なるべくかいつまんで紹介しますが、てんこ盛りなのでゆるりとご覧ください!
Executive Summary
コミュニティの専門家のうち2014年には36%しか昇進していなかったのに対し、現状63%がマネージャーとなっていることはコミュニティ形成に関する役割と価値が実態を伴ってきたことを示している。
トレンドを見るに、コミュニティがビジネスにより影響を与えるようになっており、コミュニティ自体の影響力や投資が大きくなっていることがわかる。しかし、コミュニティ担当の労働環境は激務だ。1つのコミュニティチームでは平均して実に7万人のメンバーの対応をしている。一方で、これらの活動は大きなROIを叩き出しており、コミュニティを通したメンバーアプローチのコストは1人あたり年間1.08$となっている。しかし、これはコミュニティスタッフの激務によって実現されており、早急により効率的なコミュニティ運営のプログラムを構築し、更なるチャンスを得られるような体制づくりが必要である。
コミュニティ運営はもはやどんな規模の企業もやっていると見ていい。
3つとか言ってたけどゴメンナサイ。50種類です。
■対人スキル
-傾聴・分析力
-反応・報連相
-中立的であること・対立を調整できること
-明るい空気を作ること
-共感・メンバーサポート
-人的ネットワークの調整
-新メンバーの獲得
-新メンバーの導入
-メンバーへの啓蒙活動
-ゲーミフィケーションに基づいた動機づけ行動
■戦略的スキル
-コミュニティ戦略の構築構築
-計画策定
-規約やガイドラインの策定
-ニーズや競合の調査
-状況把握・報告
-トレンドの理解と既定路線との融合
-コンサルティング
-上司への説明力
-戦略の達成
-評価指標設計技術
■ビジネススキル
-プログラムマネジメント
-ビジネスデベロップメント
-予算管理
-人材採用・マネジメント
-契約社員採用・マネジメント
-販売、インフルエンス力・伝導力
-コミュニティの啓蒙活動・プロモーション
-研修設計・実行
-ベンダーのマネジメント
-ガバナンス
■コンテンツに関するスキル
-コミュニケーションプランの策定
-ライティング
-グラフィックス・デザイン
-複数のメディア使い分け
-ストーリーづくり
-編集
-キュレーション
-プログラム・イベントプランニング
-データの分類、タグ付けの管理
-SEO、検索の知見
■技術スキル
-システム管理
-データ集積・分析
-ツール評価・紹介
-技術サポート
-メンバーデータベースの管理
-プラットフォーム構築・統合
-技術課題の解決
-ソフトウェア・アプリケーションのプログラミング
-UXとデザイン
-アルゴリズム
-アルゴリズム設計・データの取り扱い
重要度別スキル/職務時間に対するスキルが発揮される割合
■チームについて
37%のコミュニティチームは一人であるのに対し、最も大きなチームでは50人ものスタッフがいる。平均は5人。
コミュニティ専門スタッフの8%は表面的な教育しか受けておらず、62%は"背中を見て覚える"ようなほとんどガイダンスやサポートがない状態におかれている。こういった導入研修が存在していないがゆえに採用・業務の遂行・マネジメント・目的達成のいずれのプロセスでも問題が発生する。
これらの課題は業界の歴史的な課題だ。これまでほとんどのスタッフが会社としても初めてコミュニティ運営に取り組むことになっていたので教える側が教えられた経験がないためこういった研修が組めない。
■コミュニティの役割が多様化し、専門性が向上した
コミュニティチームは広がっているのに対し、コミュニティ専門スタッフの34%が1人チームである。これはコミュニティという新しい専門性を獲得できるチャンスとなっている。チームの役割が拡大していくにつれて、コミュニティは出島の部署が勝手にやっていることから、ビジネスの中枢に近づくこととなった。ビジネスサイドや技術サイドのチームと折衝しながら進めていくことは新たな専門職としてキャリアが拓けていく未来がある。
コミュニティ専門スタッフ達はかなり幅広いスキルが要求されており、個人でこなすのは難しいと考えられてきたが、実際はスキルを発揮して活躍している。コミュニティスタッフのキャリアパスを構築できている組織は19%にしか至っていない。38%のコミュニティには戦略があることから、計測可能な成果を打ち立てることでスタッフのキャリアパスや役割が明確になるだろう。
専門性が増すにつれてどうコミュニティ専門スタッフを教育していくかだが、下記のような取り組みがみられる。コーチをつける、カンファレンスに出る、オンラインの授業を受ける、コミュニティ専門スタッフのネットワークに入る、学位を取ることだ。この中でもコーチを付け、1on1でメンターと話すことは重要だ。グラフを見ても、全体平均に対して、戦略を持ったコミュニティでは大きく差がついている。56%のコミュニティ専門スタッフが他のスタッフのメンターになったこともあり、これはコミュニティの戦略に限らず個別具体の項目が多く、何をすべきかを指し示してもらうことが有益であるとスタッフ達が実感できていることを示している。一方で、こういったメンタリングは成果が見えづらく、時間も取られるために、コミュニティスタッフの業務過多の一因となっている側面がある。
幸運なことに現在ではコミュニティフリーランスが増えてきたのでそういった人たちに任せるとコミュニティスタッフチームにとって最適である。
■コミュニティの成果指標が生み出す困難とチャンス
コミュニティが成熟していくにつれ、コミュニティスタッフのリーダーが組織にとってより重要な存在になっていく。より多くのヘルプが求められるようになったり、新たにコミュニティを構築するべくコラボレーションが生まれたり。そうすることでコミュニティチームのリソースが逼迫することはあまり知られていない。
コミュニティの重要性が増していくに連れ、ステークホルダーも多くなっていく。経営陣やコミュニティのメンバー、チームメンバー、コミュニティのアドボケイト、その他業務の同僚などだ。全体の63%の経営陣がコミュニティに対して協力的で、ビジネスサイドとの連携を強化できるよう働きかけている。しかしそれでも32%のコミュニティ専門スタッフたちがリソースの欠乏を感じており、最も高いストレスであると回答している。経営陣が承認しているロードマップがあるコミュニティは実に17%にとどまっており、コミュニティ専門スタッフが幅広いスキルを発揮しなければならない原因となっている。
一方でそれらの困難が取り除かれればもっとコミュニティを、コミュニティのROIを改善していくことができるとコミュニティチームは考えている。測定可能な戦略とリーダーシップ・プログラム、プロのコミュニティマネージャー、定義されたガバナンスと測定基準がコミュニティの成長に貢献することがわかっている。
青木のコメント
アメリカではコミュニティマネジメントがいかに重要視されているかがわかるサマリーでした。特にコミュニティ運営には広範なスキルが必要とされていること、人的リソースの欠乏がもたらすバーンアウトはかなり大きなものとなっています。特にコミュニティチームの業務過多は深刻で、特に教育面におけるサポートの充実が急務であることがわかります。外部人材やシステムを適切に活用していくことが重要でしょう。また、日本のコミュニティマネジメントでも課題となっているキャリアパスについても課題を抱えています。全体の38%しか戦略がなく、そのうちの19%しかコミュニティスタッフのキャリアパスが構築できていないとなると、戦略から落とし込んだコミュニティスタッフの評価指標を設計するにもハードルがあることが推察できます。外部人材の活用と戦略設計、評価指標の設定がコミュニティマネジメントという業種が発展するために重要です。
次回はコミュニティチームを構成する職種について紹介します。お楽しみに!
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