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理論から考えるコミュニティ設計 1. 向社会的行動の理解

 こんにちは。青木です。

 本稿は「理論から考えるコミュニティの設計」と題した連続記事です。コミュニティを事業活動の一貫に位置づけるためには目標の成果物を得たいもの。本連続記事ではコミュニティの要素を分解、理論を当てはめ、目標の成果物を得るためのノウハウを説明します。コミュニティ版THE MODELを目指して。

 今回は第一回、向社会的行動の理解です。

① 向社会的行動とは

 コミュニティ内で一般的に望ましいと言われている行動を社会学では向社会的行動といいます。簡単に言い換えると、あるコミュニティに所属する人がコミュニティ内の他者のためになることをしようとする自発的な行動です。他者の悩みを聞いてあげる、必要としている資源を分けてあげるなどが例として挙げられます。向社会的行動の結果が協業や仕事の紹介、結婚などといったコミュニティの成果に結びつきます。

 向社会的行動を理解するために、行動を起こす側に発生する下記の流れを抑えておきましょう。

  1. 他者の要求に気づく
  2. 気づいた他者の要求に対して助けるかどうかの意思決定をする
  3. 行動に移し結果のフィードバックを感じ学習する(行動しなかった、という行動も含む)

②向社会的行動の設計がコミュニティを育てる

 向社会的行動を設計することで目標の成果物が生まれるコミュニティを育成することができます。先述の各段階(下記)にそれぞれサポートをすることで向社会的行動の設計ができます。コミュニティの運営者は各段階を設計し、適切なサポートを行うことでコミュニティの育成に貢献できます。

  1. 他者の要求に気づく
  2. 気づいた他者の要求に対して助けるかどうかの意思決定をする
  3. 行動に移し結果のフィードバックを感じ学習する(行動しなかった、という行動も含む)

 ②-1 他者の課題に気づくフェイズ

  まず向社会的行動の実行者が他者の抱える課題に気づく、というフェイズです。ここをサポートするには「直接的な紹介」や「入り口の設計」を行います。直接的な紹介には「Aさんは◯◯ということに困っているのでBさん、相談に乗ってもらえませんか?」と課題と要求を明示することです。入り口の設計は「ここではWeb3.0についてのノウハウをシェアすることが歓迎されます」といったことです。

 ②-2 気づいた他者の課題に対して助けるかどうかの意思決定をするフェイズ

   このフェイズでは向社会的行動の実行者が、他者の課題に気づいた上で助けるかどうかを検討しています。実行者が助けるかどうかには自身の能力や他者が助けを求めているかといった様々な判断基準(※)があります。判断基準の中でも重要なのものが「損得勘定」です。具体的には、課題の当事者である他者への向社会的行動のコストと自身への報酬(自尊心の満足や周囲からの評価など情緒的な報酬)を天秤にかけています。この天秤が損の側に傾くと援助行動は実行されず、得の側に傾くと援助行動が実施されます。サポートすることが損になるか得になるかを向社会的行動の実行者は考えています。

 ここでコミュニティの運営者は向社会的行動を実行することが"得"になるようにサポートします。そのため、望ましい向社会的行動を実行した際に称賛が得られる(≒報酬がある)前提を共有することです。

 ちなみに「損」が勝つと向社会的行動の実行者は"実行しない"という選択をします。

   ※他にも複雑な要素が絡んでいるので興味のある方は(Eisenberg et al., 2006)をどうぞ。

  ②-3 行動に移し結果のフィードバックを感じ学習するフェイズ

   向社会的行動の実行者が自身の行動についてフィードバックを受け、次回の行動への学習をするフェイズです。実行者は課題を持った人の反応、周囲の人の反応や、②-2で見積もったコストと報酬のバランスを評価しています。

   このフェイズをサポートするには向社会的行動を行った実行者に明確な”反応"や”フォローを行うこと"です。前者の"反応"は「称賛する」「感謝する」といった行動です。次回の向社会的行動検討時に②-2のフェイズをサポートします。

   後者のフォローとは、向社会的行動に失敗or実行をしなかった際にフォローをすることです。失敗や実行しなかった際、実行者は「やるべきでなかった」「自分の援助など必要なかった」という考えを強めてしまうため今後の向社会的行動が引き出せなくなるからです。


ということで今回はここまで。次回は衡平理論について書きます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。

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