コミュニティマネジメントとは何か
こんにちは。青木です。
多くの人に通じるコミュニティマネージャーの方々とお話しをしているとどこかで「コミュニティマネージャーという役職名がしっくりこない」というのはよく耳にします。
私は基本的に「自分が呼ばれたい呼び方で呼ばれるべき」と思っています。
昔お世話になった人が「アメリカの原住民は昔インディアンと呼ばれていた。しかし最近は彼らのことをネイティブ・アメリカンと呼ぶようになった。何が変わったわけではない。しかし彼らはインディアンではなく、ネイティブ・アメリカンと呼ばれたかった。とても大切なことではないだろうか」とおっしゃっていて本当にその通りだと思っています。
コミュニティマネージャー、ディレクター、マネージャー、コミュニティコーディネーター、ネットワークコーディネーター、ビジネススタイリストなど私が知っているだけでも様々なものがあります。
しかし、コミュニティマネージャーがいるならば、コミュニティマネジメントがあるはずです。それは何なのかということについて考えていきたいと思います。
コミュニティマネジメントとは何か
コミュニティマネジメントとは「誰からどう資源を獲得し、誰へどう資源を届けていくか、戦略と仕組みを構築する。いわばコミュニティのサプライチェーンを構築する仕事」なのだと考えています。
概念図でこんなものを書いてみました。
余談ですが、これを書きながら「70%のコミュニティが組織として承認されたロードマップを持たない」「24%のコミュニティはロードマップを持っているが更にその17%にしか適切な資源が配分されていない」というアメリカのレポート(Community Round Table、以下CRT)を思い出しました。
さて、この図を解説していこうと思います。
コミュニティマネージャーの仕事は自分が所属するコミュニティ・メンバーのために価値を調達、届けるためのロードマップを描くことです。何度も出てきて略称を使いたいのでここでは今後コミュニティ・サプライチェーンと呼びます。
ここには三種類のコミュニティマネージャーが出てきます。
・Community Manager:コミュニティ・サプライチェーンの全体像を設計する役割。図左下。
・External Community Manager:コミュニティ外から価値の元になるネットワーク(以後、資源)を調達してくる役割。赤色の資源の流れを作る。
・Internal Community Manager:コミュニティ内の協調体制を構築し、メンバーに対して資源を適切に届ける役割。緑色の資源の流れを作る。
External Community ManagerとInternal Community Managerは兼務が難しい(一人では手が回らない)とされています。厳密に仕事内容を分ける必要はないが二人以上のチームで行うのが良いです。(CRTより)
ちなみにCommunity ManagerはExternal、Internal Community Managerと兼務可能と考えますがエコシステム内での現在位置を把握できるExternal Community Managerと兼務するのが良いと考えます。
さて、それぞれもう少し詳しく見ていきたいと思います。
General Community Managerの仕事
General Community Managerの仕事は自分の組織の場所、有形・無形のサービス(以下、自社コミュニティ)が将来どのエコシステム内でどんな立場で、どんな役割を担うか、自社コミュニティのメンバーにどんな資源(価値)を提供し喜んでもらうかを設計・計画します。上司やオーナーと調整を行い、計画の承認をもらってくるのもこの仕事です。時には自社の別事業や別部署の資源を引っ張り出す仕事もします。
例えばコワーキングスペースであれば「地域密着型」「出張者向け」といった地理的に区切った役割、「インキュベーション拠点」「オープンイノベーション拠点」などの機能的な役割などを考えます。この時点でそのコワーキングスペースが主にどのエコシステムに所属するかが決まります。
所属するエコシステムの検討材料には既に自社の別事業で獲得している資産や競合、協調関係、オーナー・上司・事業担当者の意志などが考えられます。
External Community Managerの仕事
External Community ManagerはCommunity Managerが設計・計画したコミュニティサプライチェーンの上流。エコシステム内で"立場”と"役割”を獲得するために活動します。
エコシステム内で他にどんな「コミュニティ」「行政」「キーマン」「組織」があるのかを検討し、誰とどう付き合うのかを検討します。どこと関係構築をすればどんな資源がスペースに調達可能か考え、具体的に関係構築・協同プロジェクトを実行する際の渉外活動を行います。
KPI化が非常に難しいですが、コラボレーション数、スポンサー獲得数は追いたい指標です。
External Community Managerは役割がらコミュニティ外で活動し、イベントの企画・登壇や外部での打ち合わせ・会食が多くなります。そういった活動を元に構築したネットワークを自社コミュニティに還元します。
Internal Community Managerの仕事
Internal Community ManagerはCommunity Managerの設計・計画したコミュニティサプライチェーンの下流。自社コミュニティのメンバーに喜んでもらうための資源(価値)を提供するために活動します。この活動はExternal Community Managerの獲得する資源を自社コミュニティ内に適切に供給することで達成されます。自社コミュニティの健康状態(メンバーのコミュニティ貢献度)はExternal Community Managerの仕事にも影響を与えます。
コミュニティにどんなメンバーがどのようなモチベーションで所属しているかということはエコシステム内での"役割”に直結します。メンバー達の資源へアクセス可能(そもそもどんな資源や興味を持っているか知っている、集客対象になり得るなど)な状態を作り、コミュニティとして活動できる状態を整えます。エコシステム内の人達はInternal Community Managerに興味があるのではなく自社コミュニティにメンバーにアクセス可能かどうかに興味があることも忘れずにおきたいです。
自社コミュニティ内に所属するメンバーがどんなメンバーであるか理想像を描き、特に自社にとって好ましいメンバーが集まるような、または好ましくない人が来ないようにする施策を行います(検討の結果本当に誰でもOKということも)。離脱防止策を考えるのも役割の一つです。また、メンバー間で資源がやり取りされるような活動、ネットワーキングイベント(食事会、勉強会など)を主催します。
主なKPIはイベントのリピート率です。(会員の)紹介による入会数、メンバー間のコラボレーション数、メンバーの月間利用日数なども取りたい指標です。
役割がら自社コミュニティに近い場所で活動し、メンバーとの雑多で大事なコミュニケーションや近況・課題のヒアリング、自社コミュニティ内のイベントの企画・実施などが多くなります。これらの活動を通して自社コミュニティ内で資源の流通環境を整えます。
あとがき
さて、これがコミュニティマネジメントの概要です。
この記事を書いたからといって「あなたはコミュニティマネージャーではない」とか「あなたはExternal Community Managerだ」などと言うつもりがないのは冒頭に書いたとおりです。
今回のコロナウィルス感染予防の騒動はコミュニティマネージャーがこれまでしていた仕事を見つめ返す機会となりました。上に挙げたような活動をされていたコミュニティマネージャーと、ただの"感じの良い人”で終わっていたコミュニティマネージャーとの違いが浮き彫りになりました。ただそれはそれです。そもそもExternal Community ManagerとInternal Community Managerは両立が難しいとされていながら役割分担がされているスペースもほとんどありません(そのスペースにとって必要があるかは別として)。私が心奪われたコミュニティマネージャーと呼ばれる人達はもっともっと活躍できるのに、コミュニティサプライチェーンのどこかがうまくいっていないがために力が発揮できていないものと感じています。人と人とを繋ぐ鑑識眼は誰にでも持てるものではなく、幅広い業種・業界のネットワークを持つコミュニティマネージャーはもっとずっと価値ある専門職なのです。
コミュニティマネジメントの思想的枠組み、人と人とが互いに助け合える、高め合える、手を取り合って前へ進むことができる仕組みづくりによってコワーキングスペース業界に貢献していきます。
㈱funky jumpでは下記の事業を行っております。
・コワーキングスペースの事業設計、コミュニティ設計業務
・現場スタッフの育成業務
・コワーキングスペースの視察案内業務
・ワークショップ運営