6カ国9都市25スペース+1訪問記
先日タイトルにあるように6カ国9都市25スペースを歴訪してきました。レポートというほどしっかりしたものではありませんが、新鮮な感想をシェアします。
本視察の目的
沖縄のスタートアップエコシステムの成長を後押しするために、アジア・環太平洋諸地域のスタートアップエコシステムとの接続が肝要である。更にその接続は実際にスタートアップ支援の現場に立つ、コミュニティマネージャーを始めとする実務者によってなされることが望ましい。そのためインキュベーションの役割を担う各都市の実務者と沖縄の実務者を繋げるために、どこの・誰と・どのような連携をすることを目指すかを検討するための視察。これにより相互のスタートアップの送り出し・受け入れを促し、実務的な国際的スタートアップエコシステムを構築する。
訪問先
古代ギリシャのような平和を謳歌する日本 -パクス・ジャパーナ-
まず一つだけ感じたことを挙げるすればこの見出しです。古代ギリシャといえば地中海で交易や豊富な海産物を始めとした経済・食料基盤により生活が安定したために哲学に割く時間ができ、多くの偉大な哲学者が生まれた時代です。万学の祖と言われるアリストテレスが活躍し、その後のパクス・ロマーナに繋がります。
これは日本が他国・他都市に比べて平和で余裕がある国だと感じたために持った感想です。もちろん都市によって差はあるのですが、日本は存在しているコワーキングスペースが比較的多様です。地価が高い都市や治安が一定水準に満たない都市では提供できないサービスに溢れています。
一方で"選択と集中"については訪問先諸都市に分があります。インキュベーションスペースは日本に比べて2桁以上の大きな予算が投下されることもあり、ワークスペースの付加価値に注目が集まり、結果が出ています。先日JCCO認定コミュニティマネージャー向けの記事で共創の"クリティカル・マス"についてという私の仮説を紹介しましたが奇しくも仮説を裏付けた形になります(簡単にまとめると共創の目的を何に定めるかによって施設規模が決まる、という仮説)。
この状況、パクス・ジャパーナをどう捉えるかは人によるものです。この平和を活用すれば、自分のやりたいビジネスを実現できる好機です。今が平和でないとして保守的に動くこともあり得るでしょう。私は、今が古代ギリシャのような時代だとしたらその哲学を持って平和に接続できる役割を担おうと思います。
実は先日Coworking Europeでの登壇を行った際に感じたことでもありました。私のコミュニティマネジメントの理論はヨーロッパで大変興味を持っていただいたものですが、"日本ではそこまで考えるのか"という驚きを持ったものでした。それは先述の平和があるがゆえに向けられる関心であり、平和であるがゆえに生まれたものと感じています。哲学から新たな学問への基礎を橋渡すことが今の私たちに求められることだと思います。
中央集権的なアジア。そして"アジア"で括れない"アジア"
アジア諸国の様子を見ていると歴史的に影響下に置かれた文化圏を意識すると理解しやすいように感じました。中華圏では中央政府が主導し、結果を出すことが強く求められる雰囲気(結果が出せないと革命が起きる文化圏)、大英帝国圏下では分割統治方針のもとそれぞれの階級がそれぞれの生活をする、といったものです。国という単位で見たときにヨーロッパとアジアを比較するとアジアの方が圧倒的に多様に見えます。同時にビジネスの展開や状況を学ぶにあたっては国の体制や文化が異なるために理解の難易度が高いこととなります(私もすぐに相手の文化OSがわからないと何言ってるかわからんと思って訪問先各地域についてyoutubeで何本もの歴史解説を視聴しました)。
その上でも実務的で身体的なネットワークを持つことが大変に重要という考えが更に深まりました。
結局日本のワークスペースはどこに何を学ぶべきなのか?
"商業的アプローチを学びたいならヨーロッパ、政策的アプローチを学ぶならアジア、仲良くするならバイネーム"と覚えてください。商業的アプローチは中央政府(EU)の力が比較的弱いヨーロッパで発達しています。政策的アプローチは先述のように日本とは異次元の規模の投資をしているアジア諸国が先輩となってくれるでしょう。そして特定領域に特化したネットワークを構築するのであればバイネームでのお付き合いをするのが良さそうです。
"学ぶ"の本質的意義は他人のPDCAを参考に自分のPDCAを回すコストを下げられることです。逆にその必要がない場合(普通にあり得る)はシンプルに仲良くしておけば大丈夫です。例えば今回訪問した先にはノマドワーカーを基点としたスペースもありました。そういったスペースはそれぞれの雰囲気が大変に重要なので、そこは自分でPDCAを積んでもらうとして、オフィス環境おいては同程度のものが揃っていることが必要です。"仲良くする"ためには相互に対等なレベル感であることが重要です。もし世界の様々な方をお客様として受け入れたり、一緒にやっていくのであれば、そのレベル感を把握するために、やはり世界に飛び出していくことをオススメします。
私はこうして構築したネットワークを活用して沖縄のスタートアップエコシステム成長の後押し、そしてコミュニティマネージャーが持つ付加価値の向上に向けて国益に資する動きをして参りたいと考えています。
最後に 訪問レポートはFLC Fes 2025 in Kozaで解説!
最後になりますが各国各都市の訪問レポートについてはFLC Fes 2025 in Kozaで公開予定です!皆さんお楽しみに!!
ほんとの最後に。
今回の旅はこれまでのキャリアの総動員みたいな旅でした。ずっと英語でいろんな国、都市の方と話ました。また、自分がコワーキングの運営者であり、元アクセラレーターだったり、スタートアップを志してサービスを作ったり、アメリカ・ヨーロッパなど各国に渡ってコワーキングやインキュベーションの情報を持っていたり、DATE Appsで学生のビジネスプランに伴走したり、そして今JCCOとしてコミュニティマネージャーの育成に取り組んでいたり。これらを駆使していかに信頼関係を作っていくか(といえばカッコイイけど「こいつ何者やねん」を脱せるか)というチャレンジをずっとしておりました。
また、実際の訪問にあたってJETROの方々、OISTチーム、フォーシーズ豊里さん、01Booster川島さん、Startup Backpacker椎名エバレットさんに現地の方々をお繋ぎいただきました。そしてもちろん現地でご対応いただいた皆様、大変ありがとうございました!
これまでお世話になってきた皆様に改めて感謝を、そしてこれから、これからもご一緒する皆様へどうぞよろしくお願いいたしますの気持ちを込めて。ありがとうございました!!!!