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Eps.2 名前も知らない君へ

最後にもう一度だけ彼女に会いに行こう。そう決めていた。しかし、思わぬ業務トラブルが発生し、その願いは叶うことなく僕は日本へと帰国することになった。

あれから8ヶ月。
季節は巡り、青島はすっかり冬の装いを見せていた。仕事を終えた僕は、まるで何かに急かされるように足早にあの店へ向かった。大きなガラス扉を押し開けると、店内の賑やかな光景が目に飛び込んでくる。視線は自然と店内をぐるりと見渡していた。

「一位」と店員に告げると、今回は迷わず2階のテーブル席を希望した。席に案内される間も、席に着いてからも、僕の目は彼女を探し続けていた。しかし、その姿はどこにも見当たらない。

とりあえず落ち着こう。そう自分に言い聞かせ、あの日と同じように野菜の水餃子と青島ビールを注文する。料理が届くのを待つ間も、目の前を通り過ぎるスタッフたちに目を凝らした。だが、通り過ぎる一人一人が僕の期待を裏切る。

そしてついに、我慢できずに近くにいたスタッフに声を掛けた。「你好,我问你一下。。。」そんな一言が、思わず喉の奥からこぼれた。


僕: 你好,我问你一下,我在找一个人。
去年她在这家饭店工作过,是一个头发有点金色,还带一点蓝色的女人。你知道她吗?

店员: 哦,我知道你说的是谁,不过她现在不在这里了。
她已经回老家了,我们也不清楚她什么时候会回来。

僕: 好的,明白了。谢谢你。


勝手に会えるものだと思い込んでいた。その分、帰り道の足取りは重く、いつもより街の灯りが遠く感じられた。

まだ名前も知らない君。
それでも、あの日の笑顔だけは鮮明に覚えている。まるで焼き付けられたかのように、心の奥に刻まれている。

「次は会えるかもしれない。」
そんな自分勝手な期待を胸に抱きながら、僕はまたこの店に戻ってくる日を、密かに夢見ていた。
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会話例文(Eps.2 名前も知らない君へ)

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