マンガやアニメの原画を収集・保存する拠点整備へ
ちょっと前の話題ですが、こんな情報が流れてきました。
マンガやアニメの原画の収集・保存や展示を担う拠点施設の整備に向け、文化庁が検討会を立ち上げたとのこと。コレは朗報&大きな前身ですね。
①漫画原稿は資産?
漫画家の原稿は、原稿料が1万円でも、原稿料の値段ではなく。それ自体がオークションに出たら数十万とかそれ以上の価値が付きます。雷句誠先生が、編集部の原稿紛失に対する不誠実な態度に、実際にオークションで価値を証明し、裁判でも非公開の若いに持ち込みましたが。
業界の慣例で、原稿の紛失は原稿料の3倍返しとか10倍返しとか、出版社ごとにあるのですが。原稿料5万円の週刊連載の売れっ子漫画家だと、3倍返しなら1枚15万円ですが。オークションで30万円以上の価値が付けば、裁判所はその価値と見なすでしょう。
でもコレ、同時に漫画家が亡くなったとき、それらの原稿は財産と見なされ、課税対象に。
②莫大な相続税が…
例えば週刊連載を30年間続けるような、ベテランの売れっ子だと、年間1000枚の原稿を執筆し、トータル3万枚の原稿になります。1枚30万円と見積もられると、90億円になってしまいます。とても ではないですが、相続税を払えません。
実際、漫画家がなくなった後、遺族は原稿をオークションに出して売ろうかと、相談してくることもあります。
例えば、明治や大正時代の文豪の生原稿は、博物館に入っていることが多いですね。それだけの文化的価値があるということです。漫画の原稿も、将来的には確実にそうなるでしょう。
でも現状では、それが散逸する危機に、見舞われています。だからこそこういう試みが、意味があるのです。
③価値は時代で変化
まだまだ 漫画やアニメを、低俗な大衆文化と見る人もいるでしょうけれど。
能や歌舞伎や文楽 だって、その初期段階では低俗な大衆文化と思われていました。
能を大成した世阿彌でさえ、時の将軍が彼を可愛がると、あいつらは乞食(こつじき)の所業をなすものだからと、諫言する部下がいて。
歌舞伎も、初期は浅草弾左衛門が支配する、被差別階級の芸能であり。歌舞伎役者は外出する時には特別な形状の笠をかぶることが、義務付けられていたほどです。でも今は、日本が誇る伝統芸能として、世界に知られています。
これは浮世絵もそうで。見返り美人で知られる、菱川師宣の作品の多くは春画です。
葛飾北斎や喜多川歌麿など、著名な絵師のほとんどが、当時であっても違法な地下出版であった春画を手掛けています。つまり、ポルノ画家。
でも、現在はそのエロ絵が世界の名だたる美術館で展示されるわけで。
④未来へのバトン
100年後や1000年後の未来の日本人ために、現時点で漫画やアニメやゲームの創世記に関わった偉人たちの、原画や資料を保存しておくことは、大きな意味があると思います。国宝の『鳥獣戯画』であっても、あの当時は価値があるものだとは思われていなかったはずです。でもそれを保存し残した誰かがいたからこそ、漫画のルーツとしての作品が、今現在も私たちの前にあるわけで。
ただ、「クールジャパン」などと政治家が言い出して、でもクリエイターに対しては何も還元されこともなく、あるいは税制的な部分で優遇されるようなこともなく(出版社にはある)、莫大な予算が溶かされてしまったという、苦々しい過去もあります。幸い、現在はご自身がアニメ化もされた大ヒット作を持つ、一流の漫画家である赤松健先生が国会議員となり、業界にたかる連中は排除されるでしょうから。
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