ホラー シルキー増刊『奇奇怪怪』Vol.3
白泉社の『ホラー シルキー増刊 奇奇怪怪 Vol.3』が発売中です。今回は当方の原作は掲載されておりませんが、ベテラン作家が多く、安定して面白い雑誌ですので、興味がある方は是非どうぞ。前号でご縁ができたので、内容についての雑学でもツラツラと。
那州雪絵 『誰かーSTRANGERー 』
春休みで人のいない女子寮で仲良し3人組に起きた、3人しかいない筈が4人居る異常事態。誰かが幽霊、でも誰が―!? 『ここはグリーンウッド』に繋がった名作
萩尾望都先生の傑作に『11人いる!』がございますが。あの作品もSFでありながらも、ミステリー要素や学園モノ的な友情など、いろんな要素を含んでいましたね。 本作も、不思議な味わいで、温かみのある読後感が好みの作品でした。
いないはずの人がいる、というのは心霊写真の定番でございます。そこにいないはずの人間が写り込んでいる、というのは恐怖。 それに気づかずに、笑って写真を取っていたりすると、更にゾッとするのですが。その場を誰かに支配されていたという事実が、恐怖を増すのでしょう。
この、その場にいないはずの人間がいるというのは、東北の座敷わらしも似ておりますね。 子どもたちがワラワラといて、数を数えるとひとり多い。でも、大人にはその子の存在が認識できない。 その不思議な存在に惹かれるのですが。座敷わらしは、東北地方の堕胎の風習と密接な伝承です。
江戸時代の堕胎は、妊娠中に行う中条流などもありましたが。医者の数も不足気味な地方では、母体保護の点から、出産後の間引きが一般的でございました。 これは南米のインディオ・ヤノマミ族なども同じでございますね。 そうやって間引かれた子への思いが、座敷わらしの伝承になったのでしょう。
心理学者の中村希明先生が著書『怪談の科学』で紹介されていた、天明の飢饉で母親に河原の石で撲殺された子供の惨事が、後に殺された子供は河童になったという伝承に変化されている説を、紹介されています。 昔ばなしには、過酷な現実が投影されているのでしょうね。