同人誌文化と印刷所
同人誌の印刷所は、冬コミでてんてこ舞いだったでしょうけれども。
日本の文化を根っこのところで支える、大事な仕事。
個人的に思うことを、いくつか書いてみますね。
①作る側と作られる側
日本は、田舎の小さな町でも印刷所があるんですよね。それは、日本が昔から紙の品質が高く、安価に入手できたようで。
結果、折り紙の文化が生まれ、また絵画の文化も早くから発達し、江戸時代の浮世絵版画に結実します。
製紙と印刷の文化も、各地で発達し。現代の地方でも、本屋はなくても印刷所はいくつかある、みたいな地域がありますね。
そういう文化が、同人誌も支えている面が。
記事で紹介されている、同人誌印刷所ねこのしっぽは、元々が同人誌を作る側の人間が、印刷する側に回った、稀有な例で。古今亭志ん駒師匠の残された川柳の傑作に「される身に なってヨイショは 丁寧に」があります。幇間芸は、ただ褒めればよいのではなく、相手が面映ゆくなったりしてはダメで。絶妙な加減が大事という、後輩芸人への教えでもありますが。
作る身になって入稿は丁寧にとか、焦る身になって対応は親身に、など応用がききそうです。そうやって、作家と印刷所の関係が高まれば、
②書店激減時代の印刷
思うに、今後の日本は、書店はますます減っていき、書店は都会の贅沢品、という時代が到来するでしょうね。映画館でさえ、地方では県庁所在地とかでないと、存在しませんからね。
大手のヒット作品は紙の印刷書籍として、そういう書店に流通するのでしょうけれども、中堅弱所の出版社は、電子書籍が中心になるのは必然。
ただ、Amazonのプリント・オン・デマンド(POD)サービスが、楽天やDMMなど他の配信会社でも対応すると、また新たな展開も。
それこそ、地方の印刷所で本を出力し、POD版を入手する文化が、今後は増えそうですし。
③印刷文化の変化?
実際に、春由舎としてPOD版制作のお手伝いを下見としては、それこそ個人出版でAmazonのアカウントを作り、POD版のデータをあげて、著者自身がAmazonに注文して紙の本を入手し、同人誌の即売会で売る時代も、来そうです。
だって、POD版は著者本人が購入する分には、だいぶ割引してAmazonは売ってくれますので。印刷所の手配とか、入稿とか大変ですからね。
でも、Amazonならそこを飛ばせますし、品質も一定レベルをクリアしますので。
であるならば、地方の印刷屋さんはプリント・オン・デマンド印刷対応の印刷機の導入と、配送が将来的なお仕事になるのかもしれませんね。
都道府県別で書店がない市区町村の割合は、26%にもなるとか。まだまだ、印刷機のお値段は高いのですが、これも需要が高まれば、導入も可能でしょうし。地方の公立図書館が、代行しても良いのではないかと思うのですが……。
以下は諸々、個人的なお知らせです。読み飛ばしていただいても構いません。
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文章読本……っぽいものです。POD版もあります。
筆者がカバーデザイン(装幀)を担当した、叶精作先生の画集です。POD版もあります。
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