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電子書籍は作家にとってありがたい、という話

ギリ重版がかからず、在庫もなくなった印刷書籍の作品は、古書店で売買されても1円も作家の懐には入ってきませんが。
電子書籍だと、細々と売れた本の印税が半年に一度、振り込まれますから。

電子書籍を無駄に敵視する人がいますが、作家にとってはありがたい存在です。

電子書籍は恐ろしいんですよ……。刊行から年単位で経過してても、家計の足しになる程度の印税がスッと入ってくるんですよ……。電子書籍普及前から商業作家してる人間にとってはそれが不思議で、周囲をキョロキョロ窺ってから支払明細をそっと懐にしまうんですよ。なんか怖い。もっとください。

https://x.com/Hyougetsudou/status/1844287364652466500


①電子書籍のメリット

ギリギリ重版がかからず、在庫もなくなった印刷書籍の作品は、古書店で売買されても、作家の懐には1円も入ってきません。
ところが電子書籍だと、細々と売れた本の印税が半年に一度とか数ヶ月に1度、振り込まれますから。

電子書籍を無駄に敵視する人がいますが、作家にとってはありがたい存在なのです。

また本好きな人ほど、数千冊の本に自宅のスペースを圧迫してしまいますから。ところがタブレット型1台に1TBの外部記憶用のメモリを装着すると、1万冊近くが簡単に収納できるのは、むしろありがたい話です。

またAmazonの場合は個人出版で印税率35%、Amazon限定なら70%の印税が入ってきますから。Kindleインディーズで7000万円稼いだぬこー様ちゃんさんや、月に3桁万円の印税に到達した作家の話も、聞き及んでいます。
興味がある方は、コチラのnoteをどうぞ。

②古書と絶版本の変化

自分が上京した頃は、東京の大型古書店で手塚治虫先生の『新寶島』が、数10万円の値段で売られていました。
藤子不二雄先生や宮崎駿監督も愛読した、その伝説の名著。
ところが今は、電子書籍で購入できるのですから。

文化の継承ということを考えても、そちらの方が有益だと思うのです。
作家にとって大事なことは、紙の本を買って取っておいてくれることよりも、作品を買って読んで感動してくれることですから。

また、電子書籍によって、絶版という概念が変化しつつあります。
例えばSNSでバズって、でも紙の単行本が全部、絶版や在庫なし・重版予定なしになっていて、という例はあります。
でも電子書籍が出ていたため、思わぬ ボーナスになった作家の話も、聞き及んでいます。

③割引セールのメリット

電子書籍の場合、出版がかなり昔で動きがなくなった作品を、セールで半額とか、場合によっては80%オフなど、大胆な価格設定ができるメリットがあります。
個人で出版する作家も、確実に増えています。

またそうやってセールされた作品が、売上 ランキングに入ってきていますから、おそらく数百万かそれ以上の印税が、作家に発生していると推測可能です。
再販制度に縛られた印刷書籍では、これはほぼ不可能ですから。

初期の価格設定の是非はともかくとして、そのような形での柔軟な価格での販売が可能である点に、留意が必要かと思います。

④電子書籍のデメリット

ただ、電子書籍は配信している会社が倒産したり、契約を打ち切られて出版されなくなると、せっかく購入した本が読めなくなるという不安を、持つ人がいます。

その不安も、むしろ出版社のデジタル化が進めば、電子書籍とプリント・オン・デマンド(POD)版の両方がリリースされ、どうしても印刷書籍で欲しい本は、手元に残すことが可能になるでしょう。

また、あくまでも 一つの案ですが。
会社が倒産したりサービス停止した場合、いったん電子書籍のデータを文化庁に移管し、国立国会図書館などでデータ管理し、購入した作品の再ダウンロードに対応するなど、文化保護の面で対応を考える必要はあるかもしれません。

ここらへんの対策は、赤松先生に期待です。
また、書店消滅地域に対する救済案は、コチラのnoteを参照してください。

⑤PODの時代が到来?

出版社が制作したデータは、レコードの原盤権と同じで、出版社の財産ですから。それは、現在の書籍の版下でも同じです。
なので将来的には、著者自身がデータを買い取る必要が、出てくるでしょう。

ただ、レコードの原盤権のように、価格が高騰して、買い戻しが無理な場合もあるでしょう。なのでMANZEMIでは、作家自身が出版用のデータを制作できるように、必要な方には技術を教えています。

この実践として、MANZEMI講座の出版部門である春由舎では、POD版で臼井俊介先生のフルカラー画集を出版しています。

昔だったら、フルカラー画集を出せるのは、一握りの超売れっ子だけでした。ところが今は、個人がリスクを負わず、フルカラーの画集が出せる時代です。

⑥POD版は意外に安い

日本で折り紙 が発達したのは、早い時代から安くて高品質な紙が、比較的容易に入手できたから、とか。
西洋で生まれた模造紙も、何を模造しているかといえば、和紙を模造したから、模造紙なんだとか。

日本は百万塔陀羅尼経の昔から、印刷が行われていた国ですから。
実は紙代は比較的安価で、印刷・製本は、思ったよりも安価にできます。
むしろ現代は、流通費のほうが、価格を圧迫している面も。

でも、電子書籍は全国津々浦々、僻地でも離島でも、通算環境があれば、購入可能ですから。
電子書籍のマイナス面だけでなく、こういうプラス面も評価したいですね。

⑦新刊を出すのは何処?

芦辺拓先生から、こんなご指摘も受けました。

ところがここに罠があって、紙の本は重版しない限り、もう出版社に収益をもたらさないから新作を出し続けざるを得ず、そこで僕のような(昔で言えば貸本屋向けレベルの)作家にも仕事が回ってくる。そうしなくても細々とでも半永久的に売れ続ける電書が主流になったら……? もうわかりますよね。

https://x.com/ashibetaku/status/1845707279229927924

その麺はあるかもしれませんが、それはそれで新人育成の芽が、摘まれませんかね?
売れるかどうか解らない新人作家を、抜擢するリスクは避けるようになり。実績のある中堅ベテラン頼みになる訳で。

結果的に、『小説家になろう』や『カクヨム』や『アルファポリス』などの投稿サイトで、読者が支持した投稿者に、出版社が群がることに。

それはもう、出版事業者ではあっても、文化の担い手とは呼べないような……。もちろん、だからこそMANZEMI講座のような作家育成講座が、需要があるのかもしれませんが。


以下は諸々、個人的なお知らせです。読み飛ばしていただいても構いません。

筆者の小説(電子書籍版)でございます。お買い上げいただければうれしゅうございます。

文章読本……っぽいものです。POD版もあります。

筆者がカバーデザイン(装幀)を担当した、叶精作先生の画集です。POD版もあります。
投げ銭も、お気に入りましたらどうぞ。


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篁千夏
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