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漫画の感想を友人に求めるのは辞めておいたほうが良い?

𝕏(旧Twitter)に、榊一郎先生の、こんなポストが流れてきました。
漫画って、簡単に読めるので簡単に作れると、思われているフシがありますが。
少なくとも原作者の立場からすれば、アニメや映画のシナリオに絵をつけるぐらいの手間は、漫画家はかけているのですが……。
アニメや映画のシナリオが簡単に書けると思ってる人は、そうはいないんですが。漫画だと簡単だ考える人がいるのは、不思議ですね。

(某所見ながら)
漫画って映画とかと同じ総合芸術みたいなところがあって、『絵だけ』『話だけ』『ネーム(コマ割り演出)だけ』『キャラ造形』などなど単体で評価してもあまり意味がない様に思う。
素人さんには各要素のバランスを考慮した上でのアドバイス(改善の為の提案含め)は困難だから、

https://x.com/ichiro_sakaki/status/1870825205163253944


①漫画は準総合芸術

映画が総合芸術だとすれば、漫画には音がないですが。代わりに擬音と効果線、あとコマ割りで雰囲気を醸し出すという点で、準総合芸術的ではありますね。

そういう意味では、演劇的ではあるけれど演劇そのものではない落語に、似ている部分もありますね。
ラジオドラマなども、そういう意味で類似点があるでしょう。

落語家が一人で、すべての登場人物を演じるように、漫画は作者が監督・脚本・演出・主演・助演・カメラ・照明・衣装・大道具・小道具……などを兼ねるのも、特殊です。
もっとも脚本や演出や助演や大道具などは、原作者やアシスタントに、アウトソーシングも可能ですが。

手近なところにいる人間に『感想』を聞くまでは良いとしても、その相手に改善案や問題点の指摘なんかを問うのは多分、色々誤解が生じる元なので、やめた方がいいのではないかなと。

https://x.com/ichiro_sakaki/status/1870825729539322007

②悪目立ちする画力

素人が作品の感想を求められると、90%が絵の巧拙の話になりがちです。
素人にも分かりやすい部分ですから。

漫画家は、絵が上手いに越したことはないですが、絵のヘタさが味になったり、ストーリーが破綻していてもそれが作者の特徴になったりするので、難しいです。

良いパーツの合算によって、全体が良きモノに決定されない部分があり、そこが難しいですね。
部分部分を見たらデタラメなのに、全体としては意味があるコラージュ絵のように。

この、俯瞰して作品全体を見通すのは、どんなジャンルでも難しいとは思います。
小説とかだと、素人に感想を求めると、誤字脱字とか指摘する人が多いのと一緒ですね。

正直、小説ですら『文章』と『物語展開』とは別物、キャラ造形だって別物で、それぞれが上手い人下手な人もいる。

ぱっと見の印象を『なぜそうなったか』の原因解析も含め言語化するのは結構な高等技術なので、『数ある意見の一つ』と割り切れない人は素人さんに感想求めるのは結構危険な気がする。

https://x.com/ichiro_sakaki/status/1870826757210927428

③俯瞰と凝視の関係

ただ、面白い作品って、途中の1ページを取り出して読んでも、何か引きつけるものがあるんですよね。

それは、ページの中にも小さな起承転結や序破急が存在して、全体のフラクタル構造を形成しているから、という面があるからという仮説を立てて、専門学校などでの講座では、教えています。

鈴木輝一郎先生の、こちらの指摘も重要ですね。
もちろん、昔から一緒に作品を鑑賞してきて、見巧者の友達がいる人は、別ですが。

ぼくは身近な人間に「感想」を聞くことにも否定的ですねえ。
感想を聞かれた側に立って考えると、著者って「妄想だけで数十万文字を埋めるようなめんどくさそうな奴」なわけで、後々を考えると「無難に乗り切ろう」とするから。「何が書いてあるかわからない」って率直な感想は言えない。

https://x.com/kiichirosjp/status/1871152792691507308

④仲間を見つける場

例えば、高橋留美子先生と近藤ようこ先生が、同じ高校の漫研のメンバーで、後にアニメーターとなる後藤真砂子さんも同級生だったり。
その高橋留美子先生は、劇画村塾で山本貴嗣先生と出会い。
山本先生は中央大学漫研で、河合単先生と同期で、後輩には山田貴敏先生もいて。

どうも世に出る人というのは、無名のアマチュア時代にすでに、切磋琢磨する仲間や見巧者の仲間がいる感じです。

というか、一人の才能の周辺に、その才能に感化されて、作品の見方や考え方を磨き合う人間が、才能を開花させるのに必要なのかもしれません。
そういう意味では、周囲に意見を聞くのは、もし本人にプロになれる才能があるのならば、切磋琢磨する仲間を発見するために、行うべきなのかもしれませんね。


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篁千夏
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