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質問箱033:構図がワンパターンになってしまう

※Twitterの質問箱に寄せられた質問を、別途アーカイブしておきます。また随時、加筆修正を加えていきます。

【質問】


【解答】

①逆にパターン化する

構図の問題は、難しいです。
もう開き直って、いつもの構図で定型化してしまう、というのもひとつの選択肢でしょう。

印象に残る構図を使うと、かえって同じ構図を使うと気づかれてしまうので。平凡でありきたりな構図ですまし、セリフや表情に変化をつけるというのも、構図に振り回されないための、コツです。

でも、それだと嫌だという人も、多いでしょう。

②意識的に使い分ける

そこで思い出すのが、あるショートショートの名手の小説家がお子さんから、パパのショートショートの登場人物はどれも似たような名前の主人公だねと、言われたエピソードです。
小説は小説で、そういう悩みがあるんですね。

その小説家はそれならばと、あいうえお順に登場人物の名前をつけて、ショートショート集を出されていましたね。
〝ん〟はンガチョくんという、アフリカ人の転校生という設定だったような記憶があります。

強引ですが、サッカーのパトリック・エムボマ選手も、母国カメルーンでの本来の発音では「ンボマ」に近いらしいので問題なしかと。

これと同じで、構図も意図的に描き分けるのは有効でしょう。
その場合、引き出しの数が重要になるのですが。

③構図の可能性を計算

例えば、少女誌で好まれる男女が向かい合った構図ですが。
これも、真横から捉えた構図を90度の構図とすると、75度・60度・45度・30度・15度と回転させることで、合計6パターンになります。

さらに、右側を上にずらすか左側を上にずらすかで、変化がつきますね。
これで6×2で12パターンの構図ができます。

さらにさらに、人物を背中合わせにすれば、24パターンに増えます。
右側の人物を15度刻みで回転させることで、変化が生まれます。

人物を
・0度(左向き)
・15度
・30度
・45度
・60度
・75度
・90度(正面向き)
・105度
・120度
・135度
・150度
・165度
・180度(右向き)
・195度
・210度
・225度
・240度
・255度
・270度(真後ろ向き)
・285度
・300度
・315度
・330度
・345度

……と回転させれば、24パターンが生まれます。

24×24=576パターン。
さらに左側の人物も回転させれば。24×24×24=1万3824パターンにもなります。

④同構図を繰り返すな

そう考えると、膨大なパターンの中で、よく使う構図として5パターンぐらいしか使っていない人も、多いのではないでしょうか? こうやって多数の構図が存在し、パターンを整理するだけでも、だいぶ気分が楽になるのではないかと。

これに斜めからの確度や、講座で教えてるいくつかの技法を加えれば、二人の人物が向かい合うというよくある構図でも、たぶん数十万個の構図パターンが生まれます。

重要なのは「まったく同じ構図を、直近のコマやページで繰り返さない」ということです。少し離れたページなら、似た構図でも気になりませんが。できれば、4ページ以上は離したいところです。

先ごろ亡くなった紙切り芸の林家正楽師匠は、百科事典の項目を全部切る、という修行をされたとか。何千項目もあるのを全部切るのは大変ですが、そう考えればいろんな構図を数百書き出すぐらいは、チャレンジしても良いのではないでしょうか?

⑤絵画やアニメと比較

でも現実には、ほとんどのコマでありきたりの平凡な構図で済ませてしまいがち。でもX(旧Twitter)でちょうど、こんな意見を見かけました。

あくまでも自分が見てきた範囲では、イラストレーター志望の子より漫画家志望の子の方が構図レパートリーが多くアイデア出しが早い。という謎がこの前解けたのだけど、漫画志望の子はとにかく「ネーム」を出すことが勉強に含まれるので、イメージを「アウトプット」する数が比較にならないレベルで多いという点だった。個人差は当然あるし、異論は認める。

https://x.com/Seo_t/status/1800759694384144628

週刊少年ジャンプの平均的なコマ数は、1ページ6コマだとか。
つまり、19ページの連載作品だと114コマ前後しかないわけです。全部のコマで構図を変えるなら、120パターンもあれば良いことになります。

例えば、30ページの投稿作ならば。
1ページ平均4~6コマで、合計120~180コマが必要です。
理想は、全部のコマの構図やポーズやアングルが異なること、つまり被りがないことですから。

狙って同じ構図を描いたり、手慣れた構図はあるにしても、漫画家の引き出しは、多くならざるを得ませんよね。そう考えると、漫画家が構図の数で悩むのは、仕方がないことなのかも入れません。

かの画家 ヨハネス・フェルメールは、真筆とされる絵画は40点に届かず、失われた作品を全部合わせても、50点にもならないようで。上下優劣の話ではなく、絵画とはそういう表現ということです。彼の作品も、似たような構図が多いですね。これは、モランディもそうですが。

逆にアニメは、1秒間に24枚の動画が必要で、36枚と増やすことも有り。30分のテレビアニメーションの場合、原画300枚・動画4000枚ほどが必要とか。漫画よりも遥かに多くの構図が描ける能力が求められます。

そう考えると、絵画と漫画とアニメの表現の違いに、思いを致しつつ。

⑥宣伝も兼ねての推薦

でも、イラストレーター志望の学生で、180パターンをスラスラ出せる人、そう多くはないですよね。
アニメーターのように数千パターンを描ける漫画家も、少ないでしょう。

読者の印象に残るコマとなると、扉とクライマックスのページはともかく、の頃は3~5箇所ではないでしょうか?

逆に言えば、合計5~7箇所のコマやページで印象的な構図を描ければ、他は平凡でいいと思います。むしろ、悪目立ちしない平凡なコマこそが、漫画では重要です。

そう考えれば、だいぶ気が楽になるのではないでしょうか?

構図に関しては、こちらの本が参考になると思いますので、宣伝しておきますねm(_ _)m


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