背水の陣は危険
あきまん先生の寸鉄殺人の金言が、X(旧Twitter)で流れてきました。
①背水の陣
背水の陣とは、漢王朝創建の三英傑の一人、韓信が『井陘の戦い』の中で用いた戦術です。
韓信が行った背水の陣は、背後に河川を背負った陣形で、危機的状況に追い込んで普段以上の力を出した……のではありません。
自らを不利な状況に追い込んで、相手にこれなら勝てると思い込ませて城から出撃させ、その隙に別働隊が手薄になった敵の城を攻略し、最終的には挟撃して完勝した戦いです。
②国士無双
もちろん、必死に戦う兵士の頑張りで、敵軍を十分に引き付け、城の攻略を容易にし、最終的には挟撃するために全滅してはダメですから、危機的状況に追い込んで普段以上の力を出した側面もあります。
ですが、それがメインではなく。
ちなみに、麻雀の役満のひとつである国士無双も、司馬遷の史記の中に出てくる故事成語で、まさに韓信を評した言葉です。
この国に二人と居ない英傑である、と。
評したのが漢王朝の三英傑の一人である蕭何というのが、さらに凄いですが。
伸るか反るか、乾坤一擲のギャンブルではなく、リスクはあるが勝つべくして勝つ確率を上げる策であった、というのが重要です。
③迷者不問
作家志望者でも、学校を中退したり会社を辞めたりして、背水の陣を敷いて自分を追い込もうとする人がいますが……。
やらないほうが良いです。
安易に背水の陣を敷いて、たとえ日頃の実力以上の力を無理に出せても。
作家の仕事は、医師国家試験と医師免許のような、一生物の資格を取得する、テストではないですから。
デビュー後に、長い長いプロの仕事が待っています。
プロの仕事は80%の力で、安定した結果が出せることですからね。
だから、上條淳士先生は二ノ宮知子先生との対談で、デビューは一番低い壁だと、指摘されているわけで。
ドーピングは無意味です。
迷者不問、道に迷う人は得てして人に相談せずに、自分の思い込みで行動して、失敗します。背水の陣を敷く前に、良きアドバイザーを見つけるほうが大事かと。
④百折不撓
X(旧Twitter)での、コチラの指摘も非常に重要です。
まさに、この指摘どおりですね。
プロはアベレージが大事。小説家も漫画家も、そこは同じかと。
むしろ、以下の四つを把握するほうが大事でしょう。
最低値でもコレぐらいは出せる、これはプロとして必要な能力です。
当たり外れが大きくては、使う側も仕事を依頼しづらいですから。
デビュー作が生涯最高傑作で、他は凡作ばかりでは、いずれ仕事も無くなります。
平均値と中央値は、自分の傾向を知るうえで重要です。平均値はコレぐらいで、中央値はこんなモノと把握できれば、平均値よりも中央値が低いと比較的安定して作品が作れるが弾けきれないタイプか。
平均値よりも中央値が高い、ムラがあるけど意外性があるタイプか、把握できます。
偏差値はなにも、受験の指標ではなく。自分の作品の目安にも出来ます。
これらを把握し、それぞれを少しでも上げていくと、最高値も自然に上がりますね。
背水の陣を敷いて最高値を上げても、最低値や平均値や中央値が必ずしも上がるわけではないのが、ポイントです。
むしろ、いろんな試練にも変わらない、百折不撓の心が大事かと。
⑤磨穿鉄硯
もちろん、自分の限界をうがった結果、以降の作品がグンと上がることはありますが。
それって、初投稿作品を書き上げた直後に、起きることです。
二作目を書き上げると、それが来る人もいます。
漫画家の場合、連載まで至った作家だと、3分の1が投稿作100枚以内でデビューする、才能の世界ですが。多くの投稿作は30ページ以内の規定が多いので、だいたい3作目までにデビューに至ります。
でも、そういうタイプでない投稿者は、20%ほどが投稿作500枚以上かかることが、トキワ荘プロジェクトのアンケートで出ています。
背水の陣を敷いての瞬発力ではなく、地道にコツコツと積み重ねる努力の方が、はるかに大事かと。
継続は力なり。磨穿鉄硯の精進が大事かと。
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