石膏デッサンを学ぶ理由
受験デッサンといえば石膏デッサン!
というくらい、絵画教室や美大受験予備校に行くと書かされますね。
特に、ファイン(純粋芸術)系と呼ばれる学科(主に日本画、油画、彫刻)では、ほぼ必
必須になってきます。
石膏デッサンってなに?
ファイン系しかやらないの?デザイン系には必要ないの?
石膏デッサンで何が学べるの?
といった疑問に答えていきたいと思います。
・石膏デッサンってなに?
冒頭で「受験といえば石膏デッサン!」と言いましたが、石膏デッサンとは一体なんなのか。今一度考えて見ましょう。
石膏デッサンとは、白い石膏で型取りしたギリシャ彫刻をモチーフに木炭や鉛筆でデッサン(素描)する事です。石膏デッサンの歴史は長く、100年に及ぶとも言われています。
石膏デッサンは、日本の多くの入試課題として取り入れられ、「全体感」「形態」「明暗」「量感」「動勢」などの総合的なデッサン力を見るために用いられてきました。
つまり、石膏デッサンを見ればその人の画力が測れるという事です。
また、石膏像は芸術として完成された美術品を元にして制作されています。
時代の巨匠が詰め込んだ「芸術」の形を模倣する訓練をすることで、デッサン力を向上させることができるわけです。
・ファイン系しかやらないの?デザイン系には必要ないの?
前述したように、石膏像は芸術品であり、それを学ぶ事はファイン系の学部において重要だと考えられています。しかし、デッサンが観察力を養い、美を学ぶ事である以上、デザイン系の学部におけるデッサンと違いはありません。自分のデッサン力を向上させたい。今自分のデッサン力がどのようなレベルか知りたいと思えば、積極的に挑戦するのも良いでしょう。その時には、画面にどのように石膏像が入るのがベストかをより意識すると良いでしょう。
・石膏デッサンで何が学べるの?
1観察力を養える
身近なモチーフを描く静物デッサンと異なり、完成された芸術品を模った石膏像には、美の概念が詰まっており、ただ見ただけではその複雑な形態を描き出す事はできません。それを描き出すためには観察力が必要です。繰り返し石膏デッサンを行うことで、その観察力を養うことができます。
2印象を合わせる訓練ができる。
石膏デッサンでは、必ず顔を描くことになります。顔は形を測りとるだけでは似てくれません。「像を見て似せて描く」必要があります。これにはやはり観察力が必須です。
顔のパーツを一つずつ見て描くのではなく、全体のバランスや顔の正中線を見極める力が必要になります。
3光と影の捉え方を学ぶ
石膏像は文字通り石膏から出来ています。石膏とは硫酸カルシウムを主成分とした鉱物であり、色は白です。滑らかな光沢があり、美しい陰影を作り出してくれます。
また、石膏像は数あるモチーフの中でも最大級です。大きいと陰影の出かた差が激しくなり、石膏像に映る光と影のトーンは無数にあります。
白いモチーフに出る陰影の無数のトーンを読み解き、木炭や鉛筆で描き分けることで、絵を描く上で必須になる「光と影の捉え方」を学ぶことができます。
石膏デッサンは昔から素描を学ぶ上で中心的役割を果たしてきました。賛否はあるものの、学びが多い事に間違いはありません。
芸術における歴史的な彫刻を描くことが自身の観察力や芸術的感覚を養えることと信じて、日々取り組んで下さい。
金沢美術学院
永井ちなみ